2018年10月21日(日)

自己否定は自らせよ
SmartTimes (柴田励司氏)

コラム(ビジネス)
2018/2/26付
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紙の本を買わなくなった。書籍はほぼKindleで読んでいる。生来、本好きで本に囲まれていると心が落ち着く性分だったが、先月最後の書棚を処分した。大量の本は寄付したり、ブックオフに売ったりした。書店にもあまり行かなくなった。

1985年上智大文卒。マーサ-ジャパン社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブの最高執行責任者(COO)などを経て、2010年インディゴブルー社長、15年から会長。

1985年上智大文卒。マーサ-ジャパン社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブの最高執行責任者(COO)などを経て、2010年インディゴブルー社長、15年から会長。

本を読むという行為は変わっていない。本から知識を得る、著者の世界観に触れるという読者としての価値、つまりは顧客価値も変わっていない。その媒体が「紙」から「電子媒体」に変わっただけだ。

「顧客価値の再定義」。事業者たるもの平時から考えておくべきことだと思う。現在、提供している顧客価値の再定義、または本の例のような提供手段の再定義には時間がかかる。いざという時になってから考え始めても、そう簡単に再定義は進まない。有事対応は平時からだ。

再定義を行うと現在やっていることを自ら否定することになりかねない。それを避けては通れない。しかしこれは考え様だ。自分で否定して新たな姿を描くなら自分のコントロール下でやれる。そのための備えもできる。他から否定されると防戦一方になってしまう。誰かに否定されるのなら、自ら否定しておいた方がいいに決まっている。

再定義の最大の障害は人の心だ。再定義に伴う自己否定の必要性を頭ではわかっている。しかし、心のどこかで「先のことだ」と思っている。どうなるかわからないことにチャレンジするよりも、「今の世界」の中でなんとかしようとする。上の人間のその意識が再定義に向けた組織的な働きかけを鈍化させる。

私が塾長を務める次世代リーダー育成塾では自社の顧客価値を改めて考えるところから始める。その上で、顧客価値を毀損させるあらゆる可能性を考え、顧客価値の再定義を行う。その後、再定義した顧客価値の実現のために「今やっていることの中で守るべきこと」、「止めるべきこと」、「新たに始めるべきこと」の施策に整理する。

どんな組織でも、これらを実現させようとすると時間を要するものだ。10年後の話であったとしても、今から手掛けておかないと間に合わなくなってしまう。これらの提言は現職の経営陣に対して行う。そこで現職の経営陣がどのように反応しようと、本人たちが必要だと思うことは粛々と進めていくべし、と話している。現職の経営陣の心のブレーキを解放するためにこう話している。

「将来のために必要だと腑(ふ)に落ちたなら、未来のための活動を応援してほしい。今日のアジェンダではない。しかし、明日のアジェンダかもしれない。そのために自由に議論し、活動させてあげてほしい」と。これは研修ではない。未来の担い手らによる顧客価値の再定義という未来戦略のシミュレーションなのだ。

[日経産業新聞2018年2月26日付]

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