2019年6月18日(火)

大企業の仕組み 転換の時
SmartTimes (高宮慎一氏)

2018/2/23 6:30
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以前、この欄で大企業がスタートアップ企業の生態系を進化させる原動力となっていることは述べた。それは、大企業からすると、スタートアップと連携し、外部からイノベーションの種を取り込み、事業成長や競争優位につなげていることにほかならない。

テクノロジー分野のスタートアップに数多く投資し、社外役員として経営を支援。支援先には、アイスタイルやナナピ、メルカリなどがある。東京大学経済学部、ハーバード大学MBA卒。

テクノロジー分野のスタートアップに数多く投資し、社外役員として経営を支援。支援先には、アイスタイルやナナピ、メルカリなどがある。東京大学経済学部、ハーバード大学MBA卒。

こうした大企業の動きは「オープンイノベーション」と呼ばれ、現在、大きなトレンドとなっている。

オープンイノベーションは、IT(情報技術)が勃興した2000年代前半に米国で支配的になった考え方だ。追うべき技術トレンドが爆発的に多くなり、しかもどれが勝ち残るかを見極めるのが難しくなったことが背景にある。

以前は技術開発から、商品化、事業化まで全て内製で行う自前主義だった。それが外部のスタートアップから情報を収集したり、ときには投資も絡めて囲い込んだりするようになった。さらに採用すべき技術を絞り込んでいき、社内に取り込み、商品化や事業化につなげる。まさに自前主義からの大きな転換と言える。

オープンイノベーションの模範とも言うべき、米シスコシステムズは「買収による開発」戦略を掲げている。買収した企業の数は1993年の初案件から累計で約200社になった。

ほぼルーターのみだった事業領域は、スイッチやコミュニケーションネットワーク、映像ネットワーク、セキュリティーなどに拡大している。しかも各領域でシェア世界1位または2位という、強固なポジションを築いている。

日本における先駆けはKDDIだ。グリーやナナピ、ソラコムなど多くのスタートアップと連携、出資、買収をしながら、携帯キャリアからネットサービス、IoTインフラなどに事業領域を拡大させている。背景には、経営トップの長期的コミットと、スタートアップ連携の仕組みがある。

ITバブル崩壊や世界金融危機などに直面し、多くの大企業がスタートアップとの連携をとめてしまった。しかし、KDDIでは、20年近くも前から高橋誠次期社長らが歴代社長のバックアップを受けながら、短期的な損益に動じることなく継続させてきた。

トップの強いコミットがあるからこそ、スタートアップ連携の責任者は、スタートアップ業界への「顔」になれる。そのことは長期的にオープンイノベーションの窓口、推進役として活躍できる理由にもなっている。スタートアップへの出資に関しても、新設したコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の枠組みの中で迅速な意思決定が行えている。

新たなイノベーションの獲得方法としてオープンイノベーションが機能するには、長期的なトップのコミットメントのほか、大企業とは根本的に違うスタートアップを受け入れることができる仕組みや企業文化の醸成が必須となる。

[日経産業新聞2018年2月21日付]

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