2018年7月22日(日)

米の鉄鋼輸入制限は百害あって一利なし

2018/2/19 23:44
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 米商務省は鉄鋼とアルミニウムの輸入増加が安全保障上の脅威になっているとし、それに対処するための具体的な輸入制限案をトランプ大統領に提案した。

 大統領が輸入制限措置の発動を決めれば、ルールに基づく世界の貿易秩序に重大な悪影響をもたらしかねない。米国がこうした措置を取らないよう、日本や欧州は働きかけを強めるべきだ。

 今回の商務省の対応は、米国の安全保障を脅かすような製品輸入を制限することを認めた米通商拡大法232条に基づく。

 鉄鋼については(1)すべての国に最低24%の追加関税をかける(2)中国など12カ国に最低53%の関税をかけ、他の国には2017年実績と同じ輸入割当枠を設ける(3)すべての国に17年実績の63%に相当する輸入割当枠を設ける――という3案を提示した。大統領は4月中旬までに対応を決める。

 輸入制限措置は3つの点で問題がある。1つ目は自由な交易を軸とする世界の貿易秩序を大きく揺さぶる恐れがあることだ。

 世界貿易機関(WTO)は安保を理由にした輸入制限を認めているが、想定されているのは差し迫った紛争など例外的な事態だ。輸入制限を正当化するような安全保障上の事態が起きているわけではなく、米国が導入に踏み切れば、安保を理由にした輸入制限が各国で乱用されかねない。米国の一方的措置に対して高関税などで報復する国も出てくるだろう。

 2つ目は問題の本質的な解決につながらないことだ。鉄鋼については中国などの過剰設備の解消が求められており、そのための対策を話し合う閣僚級の会合も開かれている。国の補助など競争をゆがめる行為をなくすよう日米欧などが圧力をかける仕組みであり、中国も一定の対応を迫られている。

 こうした枠組みを無視して独断的措置を取れば、中国などが「問題を起こしているのは米国」と矛先をかわそうとするのは確実だ。米国と日欧との結束も乱れよう。

 3つ目は米国自身にも打撃となりかねないことだ。米政権はすでに多くの輸入鉄鋼製品に反ダンピング(不当廉売)関税を課しており、鉄鋼価格は上昇している。これに輸入制限が加われば、鉄鋼製品を使う自動車メーカーや消費者が受ける被害は甚大になる。

 一方的な輸入制限措置は、世界や米国にとって百害あって一利なしといわざるをえない。

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