2018年8月21日(火)

春秋

2018/2/14 1:11
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 昭和初期の帝都をルポした今和次郎の名著「新版大東京案内」に、銀座の泰明小学校が出てくる。関東大震災からの復興を機に、とびきり贅沢(ぜいたく)に仕立てた校舎は考現学者の目を大いに引いたようだ。外国人にも恥ずかしくない「超モダン」な建築だと驚きの筆致である。

▼校舎はいまも健在で、美しい曲線、半円形の連続窓、おしゃれな門扉など銀座の街によく似合っている。公立とはいえ、伝統のブランド校なのだ。住民は少ないから校区外から積極的に子どもを受け入れ、お金持ちの保護者が多いと聞く。いま世間を騒がせている「アルマーニ制服問題」は、そういう学校らしい出来事だ。

▼イタリア高級ブランドの「標準服」、つまり事実上の制服は一式8万円を超すという。いかに泰明小でもやり過ぎだ、親たちへの説明が足りぬ、などとかまびすしいが、非難のなかには公立校は清貧を旨とすべし、みたいな気分も漂っていよう。何か派手なことをすると「炎上」する社会の空気を映しているかもしれない。

▼育ち盛りにセレブ服は不釣り合いだし、買えない家庭への配慮はもちろん必要だ。しかし義務教育にもさまざまな試みがあっていい。90年も昔、こんなモダン校舎を建てた先人だってずいぶん冒険したのだろう。多様性を認める気風があったのだ。もっとも、そう考えればいっそのこと、制服なんかやめるのも手ではある。

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