2018年9月27日(木)

優生保護法の過去に向き合え

2018/2/9 23:15
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 かつての優生保護法にもとづき不妊手術を強制され、人権を侵害されたとして、宮城県の女性が国に損害賠償を求める訴訟を仙台地裁に起こした。

 旧優生保護法は、戦後の食糧不足などを背景に1948年に制定された。「不良な子孫の出生防止」を掲げ、遺伝性の疾患や知的障害などを理由にした本人同意のない不妊手術を認めていた。

 障害者差別にあたるとして96年、これらの規定は削除された。法の名称も母体保護法に変わった。だがこの間、強制的に手術をされた人は1万6千人を超えるとされる。決して過去の話としてすませられる問題ではない。

 訴状によると、女性は15歳のとき手術を強いられた。その後は日常的に腹痛に悩まされ、持ちかけられた縁談話も破談になった。

 女性側は旧優生保護法が、憲法に定められた個人の尊重や幸福追求権、法の下の平等に反すると指摘する。さらに規定を廃止した後も国が被害救済のための措置をとらなかった点を問題として訴えている。

 同様の手術が行われたのは日本だけではない。スウェーデンやドイツでは、不妊手術の被害者への補償などの救済措置をとった。国連の女性差別撤廃委員会なども、日本に救済などを勧告している。

 今回の提訴によって改めて私たちは負の歴史を突きつけられた。手術が、本人や家族の人生に大きな影響を与えたのはもちろんだが、法の存在自体が社会の偏見や差別の温床となっていただろう。

 裁判の行方いかんにかかわらず、今こそ、この問題にしっかりと向き合わなければならない。人間の尊厳についての考えを深める機会ともなる。

 そのためにはまず、政府が過去の手術の全容を把握し、明らかにすることが大切だ。

 手術を受けた人は高齢化が進み、声を上げるのも容易ではない。これらの人に寄り添い、支える新たな道筋をつけるうえで、政治が果たせる役割は大きいはずだ。

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