2019年5月24日(金)

技術発展に失敗は不可避
新風シリコンバレー (伊佐山元氏)

2018/2/16 6:30
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ベンチャー(スタートアップ)企業が取り組む先端技術の発展と商用化には失敗や反省がつきものだ。

1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

1997年東大法卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。2003年から米大手VCのDCM本社パートナー。13年8月、ベンチャー支援組織のWiL(ウィル)を設立。

電気自動車(EV)メーカーのテスラの最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏が率いる宇宙ロケット開発会社、スペースXは、ファルコン号の発射と着陸に何度も失敗しながらも、人類が格安なコストで宇宙へ行けるようにするという夢に向かって走り続けている。

そして6日、スペースXはフロリダ州ケープカナベラルのケネディ宇宙センターから大型ロケット「ファルコンヘビー」の試験打ち上げに成功した。なんとロケットから宇宙空間に真っ赤なテスラ車が解き放たれたという。

テスラはオートパイロット(自動運転)機能を搭載したEVを普及させようとしている。だが、2016年5月には、フロリダ州でテスラの自動運転機能の利用中に起きた初めての死亡事故があった。

情報や機器がますますインターネットにつながると、ハッキングによる被害や個人情報の漏洩もあとを絶たなくなる。だが、こうした数々の経験がスタートアップ企業を強くして、技術の進歩に寄与している。

日本では、仮想通貨交換会社から大量の仮想通貨が盗まれた事件が話題になっている。仮想通貨を支える、ブロックチェーンの技術は、様々な分野で有用性が実証されつつあった。そうした中で起きたこの事件は、ブロックチェーンを含めた仮想通貨全体に問題があるかのような受け取られ方をした。関係者を含め、多くの人にとってショッキングだった。

最新技術が健全に世の中に実装され、便利でより良い社会が実現してほしい。だからこそ、難易度の高い技術や事業に挑戦するスタートアップ経営者への叱咤(しった)激励が強く求められる。社会全体がリスクとコストを理解する。その上で挑戦者の失敗から学び、彼らに再挑戦を促し、その成功をたたえる。そのような文化があって初めて、起業家は24時間戦い続けることができる。

他方、最近の日本での報道を見る限り、被害者であるはずの経営者への一方的な攻撃と非難しか見られない。これは残念としか言いようがない。たった1回の失敗だけで、まるで犯罪者扱いだ。シリコンバレーから見ると、日本は起業家によるリスクテークや、それによってもたらされるイノベーションを拒絶しているかのようだ。

少子高齢化に直面している日本では、IoT(すべてのモノがネットにつながる技術)や自動運転、人工知能(AI)、自律型ロボット、再生医療といった技術がいち早く実現されることが望まれているはずだ。政府もイノベーションの担い手の育成やスタートアップによる挑戦を奨励している。

失敗から学び、やり直しを許す社会を目指すのか。それとも失敗を拒絶し、リスクを過度に気にする社会にするのか。スタートアップとその支援に携わっている関係者だけでなく、日本社会全体の姿勢が問われるときが来ている。

[日経産業新聞2018年2月13日付]

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