2018年2月21日(水)

トヨタのサービス連携の意味 IoTが促すコトづくり
奔流eビジネス (アジャイルメディア・ネットワーク取締役 徳力基彦氏)

コラム(ビジネス)
ネット・IT
2018/2/9付
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 日本のモノづくり産業の未来を考える上で、2018年の年始の最も印象的なニュースといえば、トヨタ自動車の「eパレットコンセプト」があげられるだろう。米ラスベガスで開催された世界最大規模の家電見本市「CES」で豊田章男社長が自ら発表し、大きな反響を呼んだ。

トヨタ自動車は「CES」で移動店舗などに使える自動走行EVを発表した

トヨタ自動車は「CES」で移動店舗などに使える自動走行EVを発表した

 eパレットコンセプトの中心にあるのは自動運転機能を備えた電気自動車だ。車両制御のインターフェースを他社に開示するほか、自動車に移動や物流、物販といったサービスを組み合わせるためのソフトプログラムのインターフェース(API)を公開する。モビリティーサービスの初期パートナーには米アマゾン・ドット・コムも名を連ねている。

 従来の自動車産業の延長として乗り物を売るのではなく、新しい構想は移動手段自体をサービスとして提供するという画期的なものだ。豊田章男社長は今後トヨタは「モビリティーサービス企業を目指す」という意思も示したという。車を販売することを主力としている自動車メーカーが、自らの現在のビジネスモデルの否定とも受け止められかねない宣言をするのは大きな覚悟だったと想像できる。

 現時点では構想が発表されただけで、実現性を疑問視する向きもあるようだ。従来の常識の視点でこの発表を見て違和感を持つ人も多いだろう。

 例えばeパレットコンセプトの中心にある箱形の電気自動車は、決してSF映画に出てくるような格好いいスポーツカーではない。素っ気ないともいえる形状だ。種類もあくまでサイズによって変わるだけで、デザインは同じモデルが大量に製造されるようだ。車好きな人ほどワクワクしない発表といえるかもしれない。車の所有欲を満たすためのデザインというよりは、あくまで移動手段として、そうした個性をそぎ落とした印象だ。

 実はこれと同じ変化は既にスピーカーの分野で始まっている。

 従来は「スピーカー」といえば、購入者は音質やデザインから商品を選ぶのが当然だった。しかし現在の人工知能(AI)搭載型の「スマートスピーカー」市場で購入者が最も注目するのは、スピーカーの裏側で動いているAIの完成度や、スマートスピーカーによって実現できるサービスの多様性だ。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。14年3月から取締役最高マーケティング責任者(CMO)。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。14年3月から取締役最高マーケティング責任者(CMO)。

 さらに重要なのは、スマートスピーカー市場の主役はスピーカーのメーカーではなく、AIを運用しているアマゾンや米グーグル、LINEのようなネット企業になってしまったという点だ。

 このことは自動車のスマート化が進展するなかでのトヨタの危機意識と重なるのではないだろうか。既存の自動車メーカーとの競争にあけくれているうちに、気がついたらスマートスピーカー市場のメーカーと同様に、ネット企業が提供するプラットフォームに自動運転自動車という「端末」だけを提供する存在になってしまうリスクがあるわけだ。

 今回トヨタが自ら自動車産業の変化を加速しようと、自動車というモノづくりを軸とした企業から、モビリティーサービスというコトづくりを軸とした企業への転身を打ち出した。これは後々、トヨタの歴史上非常に重要な転換点と振り返られる可能性は高い。

 日本のモノづくり産業に求められているのは発想の転換だろう。自分たちが製造している製品が、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」技術で外部とつながるようになり、そこにAIが組み合わさっていく――。そのとき、製品は利用者のどういう問題を解決できるようになるのか。そして自分たちの市場での役割はどう変わるのか。

 真剣に考えるべきタイミングが間違いなく来ている。

[日経MJ2018年2月9日付]

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