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春秋

今月1日、福井県のあわら市へ行った。浄土真宗の中興の祖、蓮如が北陸への布教の足場とした吉崎御坊跡を訪ねるためである。かつて鐘楼などが軒を連ねたという丘は、旅姿の銅像や葉を落とした木々が寒風にさらされているだけ。足首まで埋まる雪を踏んで降りた。

▼麓の寺では若い僧侶が雪かきの真っ最中である。本堂の屋根からの落雪が参道をふさぐといい、汗だくだ。「遠くから、ようお参りくださいました」と笑顔を見せた。だが、5日以降、この辺りには、さらに数十センチの雪が積もったという。一時、1500台の車が立ち往生した国道8号は吉崎からも、それほど遠くはない。

▼北陸の豪雪には、朝鮮半島の北東部の地形が深く関係している。屏風のようにそびえる山脈のせいで、シベリアからの強い寒気が2つに分かれ、やがて、日本海でぶつかり合う。その際に気流が上昇して、雪をもたらす雲ができるのだ。あの僧侶も、いにしえから続く伝道者らの苦労をしのびつつ雪と戦っているだろうか。

▼「今度は蓮如忌においでください」。僧侶は別れ際に言った。4月下旬から5月初めの催しのようだ。「八重桜が本当にきれいです」。丘の上の像の周囲は桃色に染まるという。長い冬を耐えるかいはある、そんな思いもこもっていた。雪や寒波への備えは解けないが、その先の季節への思いは少しずつ芽生えだしている。

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