2019年8月18日(日)

本物志向×ICTで価値
SmartTimes (久米信行氏)

2018/2/9 6:30
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衣料品の国内自給率が3%台まで落ち込んでいることをご存じだろうか。2010年にこの危機的状況を打破すべく「日本発ものづくり提言プロジェクト」が発足した。カイハラ(広島県福山市)の貝原良治会長やメーカーズシャツ鎌倉(神奈川県鎌倉市)の貞末良雄会長など、業界の有志が発起人として結集した。

1963年東京都墨田区生まれ。国産Tシャツメーカー久米繊維工業の三代目会長。明治大学商学部「ベンチャービジネス論」講師、多摩大学経営情報学部「SNS論」客員教授

1963年東京都墨田区生まれ。国産Tシャツメーカー久米繊維工業の三代目会長。明治大学商学部「ベンチャービジネス論」講師、多摩大学経営情報学部「SNS論」客員教授

このプロジェクトでは、先進事例を紹介する「アパレルものづくりサミット」を毎年開いている。17年12月の第5回大会では、私が討論の司会を務め、討論に参加した10社の戦略に切り込んだ。その中から「日本発アパレルものづくり企業の逆襲」とも言える、ICT(情報通信技術)の活用事例を紹介したい。

まず学生服メーカーの光和衣料(埼玉県久喜市、伴英一郎社長)のオートファクトリーシステムだ。

3Dのボディースキャナーを学校に貸し出し、学生の身長や袖丈、胸囲、腹囲などを0.5秒で自動採寸する。「ゆったりめ」や「ぴったり」など、好みを勘案したデータも合わせて工場の自動裁断機にネットで送信する。すると、計測から最短20分で裁断した生地が完成するという。この自動採寸サービスは追加料金なしで提供している。

よさこい祭り用の衣装を製造するマシュール(高知県宿毛市、山中英作社長)の取り組みも興味深い。

よさこい祭りに参加する若者は自分たちが他のチームより目立つことに命をかけている。彼らにとってよさこいは大切な「コト」であり、そこに使う「モノ」には金に糸目を付けない。マシュールはそうしたニーズに応え、世界で唯一の衣装を創ってくれる。

衣料に詳しくない人を相手に、こだわりのオリジナル衣装を創るのは面倒だ。メールのやりとりを数え切れないほど繰り返し、ようやくデザインが完成する。ニッチなニーズに手間暇をかけて応えるところに、工場が望む利益とお客様の納得を同時に実現する高付加価値の商売が生まれる。

佐藤繊維(山形県寒河江市)の佐藤正樹社長は基調講演で興味深い例を紹介していた。

米国のビジネスパートナーにおしゃれなブランドを尋ねたところ「自転車通勤用スーツの工場直営のオンライン通販」との答えが返ってきたという。

サイトでは、素材や製法を詳細に紹介、製品の質の高さの理由を説いていた。佐藤社長が工場を訪ねてスーツを買おうとしたが、ネット以外では販売していないと断られたそうだ。

本物を志向するものづくり企業がICTを生かすと未来の業態が見えてくる。特定の嗜好を持った得意客に、オーダーメードで対応し、広告や店舗にお金をかけずにネットで直販する。在庫や値引きは不要で、顧客満足と高付加価値を同時に実現する。地価の高い大消費地に工場をつくっても成立する。

[日経産業新聞2018年2月7日付]

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