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若い億万長者が生む価値

新風シリコンバレー (校條浩氏)

ある雑誌にブロックチェーンのことを書いた。「ビットコインはバブル、ICO(イニシャル・コイン・オファリング=仮想通貨技術を使った資金調達)は詐欺、ブロックチェーンはイノベーション」とかなり過激な言葉を発した。

めんじょう・ひろし 小西六写真工業で新事業開発に従事。BCGを経て1991年にシリコンバレーに移住。新事業コンサルティングを経て、ベンチャーキャピタル及びファンド・オブ・ファンズを組成。

雑誌が出た直後に心配したことが起きた。ビットコインの価格が急落しただけでなく、仮想通貨の1つであるNEM(ネム)が仮想通貨交換会社から大量流出するという事件が起きた。

私はこの会社の運用の問題とブロックチェーン全体の本質的な課題を分けて考えるべきだと思う。それには、言葉の違いを明確に理解する必要がある。

ビットコインは仮想通貨の一種であるが、世界最大の時価総額(ピーク時30兆円以上)を誇る。通貨というよりも、投資商品になってしまった。だから、暴騰も暴落もする。

ビットコイン以外に新種の仮想通貨はたくさん考案されてきた。スマートコントラクト(自動化された契約=支払いと同時に契約が完了する仕組み)が付帯したイーサリアムや国際送金にも実用的に使えるリップルなどが有名である。ただ、今は乱立の状態であり、今後時間をかけて淘汰され、進化していくであろう。

ICOについては、仕組みが詐欺だと言っているのではない。仕組みは、クラウドファンディングの一種であり、株式に対して投資する従来の資金調達とは違う新たな方法として注目されている。

しかし、目論見書にあたる「ホワイトペーパー」では内容の信頼性とその企業や事業の実態を調査できない。ホワイトペーパーの信頼度が担保されてない現状では、一般投資家には危険と言わざるを得ない。

これらの仮想通貨を可能にしている基本技術がブロックチェーンだ。貨幣はあくまで1つのアプリケーションであり、応用分野はスマートコントラクトなどに拡大すると言われている。しかし、それ以外に具体的な提案は少なく、将来への賛否はわかれている。

インターネットも当初は具体的な価値がわかりにくかったが、多くのイノベーションが新産業をつくった。同様に、ブロックチェーンを基盤とした今後のイノベーションが期待される。

言葉の違いを明確にするとともに、忘れてはいけないことがある。仮想通貨で多くの若い億万長者が生まれていることだ。額に汗せず大金を手にした若者を妬む気持ちを否定はしない。ただ、それは悪いことばかりではない。

若者が早い時期からブロックチェーンに親しみ、新しい仕組みに興味を持って投資をしたことは素晴らしいことだ。彼らの中には、これから社会で活躍していく人が多くいるはずだ。その中には、スタートアップ企業に参加したり、投資したりして、産業振興に寄与する人も出てくるだろう。経緯はどうあれ、若者が手にした大金は、タンス預金よりも未来に対して価値があるのではないか。

日本はビットコイン大国だそうだ。それを新しい産業へのイノベーションにつなげていきたい。

[日経産業新聞2018年2月6日付]

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