2018年5月21日(月)

これで受動喫煙を防げるか

2018/2/2 23:13
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 これで本当に健康を守れるだろうか。健康増進法の改正案の骨子を厚生労働省が公表した。他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙の防止をうたうが、飲食店の多くで喫煙を認める内容だ。

 厚労省は昨年も法改正を目指し、自民党の反対で断念した経緯がある。国会での通りやすさを優先したのだろうが、あまりに大幅な後退だ。

 最大の焦点となっているのは飲食店の扱いだ。昨年の案では「屋内禁煙」を原則としつつ、喫煙専用室を設置できるとした。専用室がなくても吸える例外は、小さなバーやスナックだけだった。

 今回の案では、この例外の範囲を広げる。一定の面積以下で、個人や中小企業が運営する既存の店では、喫煙が可能になる。面積の基準は検討中だが、150平方メートル以下が有力という。これでは多くの店があてはまり、原則と例外が逆転しかねない。

 厚労省側にも言い分はあろう。例外を認めるのは当面の間の措置とし、大手チェーン店や新規の店は対象外とした。店に「喫煙」「分煙」の表示を掲げることや、20歳未満の受動喫煙を防ぐ対策も盛り込んだ。現在の健康増進法では、受動喫煙対策は努力義務にすぎない。それよりは前進となる。

 だが、それでも賛同できない。喫煙の店に入りたくなくても、上司や取引先と一緒なら断れない人もいるだろう。従業員の受動喫煙をどこまで防げるかも疑問だ。

 たばこによる健康被害は科学的に明らかだ。日本では少なくとも年間1万5千人が、受動喫煙がなければ亡くならずにすんだとの推計もある。

 飲食店など人が多く集まる場所すべてに屋内全面禁煙義務の法律がある国は55ある。国際オリンピック委員会と世界保健機関は「たばこのない五輪」を推進する。このままでは東京五輪などで来日する観光客に、日本は健康を大事にしない国と思われかねない。

 政府は「健康増進」の原点に戻って、法案を見直すべきだ。

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