2018年7月20日(金)

出遅れが目立つ遺伝子治療

2018/1/30 22:48
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 がんや難病に効く遺伝子治療薬が欧米で相次ぎ承認されている。遺伝子治療は過去に副作用死が出て敬遠されたが、安全性を高める工夫が進み再び脚光を浴びるようになった。日本も最新の研究成果を踏まえ利用を推進すべきだ。

 遺伝子治療は患者の細胞を体外に取り出し遺伝子に手を加えて戻したり、足りない遺伝子を補ったりする方法がある。2000年前後に、遺伝子を入れる際に染色体が傷ついてがんになった例が報告され、実用化が遅れた。

 その後、遺伝子の入れ方などが改善され、12年に欧州で初の遺伝子治療薬が承認された。昨年末に米国で初めて承認された遺伝子を注射するタイプの薬も含め、これまでに米欧で6製品が出ている。

 世界では2500件を超える臨床試験が進行中だ。今後、新薬の承認が相次ぐとみられる。

 一方、日本は企業の臨床試験は数件どまりだ。今年1月に創薬ベンチャー、アンジェスが承認申請した遺伝子治療薬が認められれば国内初の製品となる。

 遅れの背景には、遺伝子治療への漠とした不安がある。製薬企業も失敗を恐れ、費用のかかる臨床試験になかなか踏み切らない。被験者も集めにくい。

 しかし、最近注目されるがんの免疫療法にも細胞の遺伝子改変を伴うものがある。政府が実用化を急ぐ再生医療も細胞に遺伝子を入れる。安全確認は大事だが、遺伝子と聞くだけで過度に恐れていては海外との差が広がる一方だ。

 政府は大学、研究機関と連携して遺伝子治療の最新成果を国民に提供し、正確な理解につなげるべきだ。遺伝子組み換え生物を規制するカルタヘナ法が新薬開発にどうかかわるかなどわかりにくい法制度もあるので、メーカーへの丁寧な説明も心がけてほしい。

 遺伝子治療薬は高価な場合が多く、普及は保険財政の悪化を招く懸念もある。そこで、薬の効き目に応じて金額を変える欧米企業も出てきた。こうした例を参考に、薬価のあり方も検討が必要だ。

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