2018年9月19日(水)

iPS論文不正が問うもの

2018/1/27 1:16
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 京都大学iPS細胞研究所で論文の捏造(ねつぞう)や改ざんが見つかった。世界の再生医療研究をリードしてきただけに残念だ。11人の共著論文でなぜ誰も気づかなかったのか。原因を明らかにし再発防止を徹底してほしい。

 所長の山中伸弥教授は1月分から、給与を全額、研究所の基金に寄付するという。記者会見では進退にも言及したが、同教授に責任を負わせて済む話ではない。

 不正が京大の内部からの通報で発覚した点は、自浄作用が働いたともいえる。学内の調査委員会によると、実験結果を示すグラフなどのほとんどが改ざん、または捏造されていた。

 論文の筆頭著者の山水康平助教は「見栄えをよくしたかった」と説明しているが、実態はでっち上げに近い。研究室を主宰する主任研究者をはじめ共著者たちの目をすり抜けたのは理解に苦しむ。

 対策として、iPS研では今後、知的財産を扱う担当部署による実験ノートやデータの確認を徹底するという。しかし、管理強化だけでは限界があろう。

 米国の研究施設にならい、iPS研は壁を取り払った広いスペースを設けている。殻にこもりがちな研究者の交流を促すためだが、日常的に疑問をぶつけあう機会は少なかったのではないか。

 名実ともに開かれた研究環境を実現できれば、異常に気づき不正の芽を摘み取るのに役立つはずだ。研究の質を高め生産性を上げる効果も期待できる。

 iPS研には巨額の国費がつぎ込まれ、世界的な注目度も高い。研究者のプレッシャーは大きいという。年間の論文発表数は約150本で、主任研究者が約30人という規模から考えてかなり多い。山水助教のような任期付き雇用の若手の焦りは相当なものだろう。

 そんな点も配慮したきめ細かな組織運営や人事が求められるが、急拡大したために所長を支える組織や人材が整っていない。ガバナンスの未熟は他の研究所にも共通している。他山の石としたい。

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