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受給年齢の拡大だけでは拭えぬ年金不信

百年安心をうたう年金改革法が成立した2004年を最後に、歴代政権は本格的な改革を避けてきた。支給水準引き下げへの高齢層の反発が強く、政権運営に打撃を受けるのがわかっているからだ。

そうしたなかで年金をもらい始める年齢について70歳を過ぎても選べるようにする法案を厚生労働省は20年にも国会に出す意向だ。

長寿化に伴い年金をもらうのを先送りして働きたいという高齢者は増えている。人手不足もあってその傾向は強まっている。先送りすれば年金単価が増えるので高齢者就業を促す効果が期待できる。

もっとも、これで年金財政が好転するわけではない。65歳へ引き上げ途上にある支給開始の基準年齢をもう一段、引き上げる改革こそが王道である。困難な道だが安倍政権にぜひ取り組んでほしい。

政権は新しい高齢社会対策大綱を今月中に閣議決定する。内閣府がまとめた大綱案のなかで目を引くのが「70歳以降の受給開始を選べる制度」の検討だ。

受給開始を基準年齢より先送りする場合、厚労省は1歳につき単価を約8%増やす。70歳まで有効な今のこの仕組みを、70歳を過ぎた人にも適用するのが大綱の考え方だ。内閣府が設けた会議(座長清家篤慶応大教授)が昨年10月にまとめた報告書で打ち出した。

収入があり、長生きする自信がある人には朗報だ。逆にそう思わない人は、単価は減額されるが65歳より前にもらい始めればよい。

また一定以上の収入がある人の年金を停止・減額する制度が高齢者就業を阻んでいる面がある。この制度の見直しも同時に必要だ。

足元では表面化していないが、将来にわたって年金財政が盤石とはいえない。現高齢者への標準支給額を示す所得代替率は、想定を大きく上回っている。支給水準を毎年小刻みに切り下げる制度を有効に機能させなかったツケだ。

そこで、超長期の年金財政を安定に導く切り札になるのが基準年齢の引き上げである。欧州には67~68歳に引き上げつつある国がある。平均寿命がより長い日本は70歳を基準にしてもよいだろう。

ところが厚労省は逃げ腰だ。保険料収入と積立金取り崩しで得られる財源に応じて給付を賄っているので、基準年齢引き上げは財政好転につながらないというが、これは甚だ説得力に欠ける。

04年改革から10年以上たつ。本格的な改革に踏み出す時である。

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