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政府、温暖化「適応」を法制化

Earth新潮流

地球温暖化が進むと、気象災害の頻発や農作物の産地変化、熱中症の増加などが懸念されている。これらへの対応策づくりを促すため、政府は「気候変動適応法案」(仮称)を今国会に提出する。温暖化の影響を軽減する「適応」の取り組みでは日本は欧米に比べ遅れ気味。政府は法制化により自治体の対応を促し、企業の適応ビジネスも後押しする構えだ。

2016年に発効した温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」をはじめ、国際社会の温暖化対策は2つの柱で動いている。ひとつが二酸化炭素(CO2)などの排出を減らし温暖化にブレーキを掛ける「緩和」。もうひとつが温暖化の影響を予測し、先手を打って対応する「適応」だ。

フランス、英国、ドイツ、米国は11~15年に国レベルの適応計画を相次ぎ策定した。英仏米は法的根拠も与えて国や自治体、企業など各主体に対策づくりを求め、適応と緩和を温暖化対策の両輪と位置づけている。

日本政府もこの流れを受け、15年に国家戦略「気候変動の影響への適応計画」を閣議決定した。気象災害、農林水産業、健康など50以上の分野が「温暖化の影響を受ける可能性がある」とし、分野ごとに影響予測や対策づくりを求めた。

ただ計画の法的根拠が曖昧なこともあり、自治体や企業による対策づくりは必ずしも進んでいない。与党から「日本でも法制化すべきだ」と注文がつき、環境省を中心に検討が始まった。

これまでに固まった法案の骨格では、温暖化の影響に関する情報収集や分析を国の責務とし、自治体が適応計画を定めることも努力義務として盛り込む方針だ。

これを先取りする自治体も出始めている。

徳島県は16年10月、都道府県としてはいち早く適応戦略を決めた。同県は山地が多く台風に伴う土砂災害が多いうえ、農業や観光への依存度が高い。他県に比べて温暖化の影響を受けやすいとの危機感から「県土保全」「農業」など8つを適応の重点分野とした。

特に農業では同県産コメの主力「キヌヒカリ」が気温上昇の影響を受けやすいとし、より高温に強い「あきさかり」への転換を進めるなど、具体策も定めている。

北海道や東北では沿岸部の自治体が連携し、海水温の上昇がホタテガイの養殖など水産業に及ぼす影響を調べている。近畿北部の自治体が組み、特産品の「丹波黒豆」の収量変化を予測する研究も動き出した。

温暖化への適応はビジネスチャンスも生む。

商社や農機具メーカーなどはコメや果実、野菜の産地変化をにらみ、物流網や営業拠点を見直す検討を始めている。医薬・化学品などでも熱中症や熱帯病のデング熱の流行可能性について研究する動きも出てきた。

環境省は公的機関などが集めた情報をインターネット上の「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」で公開している。今後、自治体などが研究を本格化して情報量が増えれば、企業のビジネスを後押しすることになりそうだ。

温暖化は気象災害や熱中症の増加などでマイナスの影響が大きい半面、農業ではハウス栽培の暖房費を減らせたり、熱帯産果実の栽培地域が広がったりし、プラス効果も考えられている。官民連携により未知のプラス効果を発掘し、ビジネスを創出する効果にも期待したい。

(編集委員 久保田啓介)

[日経産業新聞2018年1月26日付を再構成]

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