使いこなせぬAIスピーカー 会話続くともっと便利
奔流eビジネス (通販コンサルタント 村山らむね氏)
日本での発売が待ち遠しかった人工知能(AI)搭載スピーカーを昨年秋に購入した。「グーグルホーム」である。届いた当日は、家族でそれぞれのスマートフォン(スマホ)のアプリから、それぞれの声を認識させて遊んでみた。娘と私の声を聞き分けるなどなかなか優秀だし、「すみません、お役に立てません」という言葉にも愛嬌(あいきょう)を感じた。

しかし、その日から3カ月。今はほとんど使っていない。使いこなせない我々が悪いのか、グーグルホームが悪いのか。もちろん我々が悪いのだろうが、どうも生活と調和させることが難しい。
動物型やヒト型のロボットのようなかわいらしさがないので、家族や友達感は薄い。毎朝「オッケーグーグル」と話しかけるモチベーションもインセンティブもない。AIスピーカーにしかできないということも特にない。スマホかパソコンでも代替できる機能か、あるいは、これでしかできないという機能にそれほど魅力を感じない。
以前にも似たようなことがあったと思って部屋を見渡すと、片隅の雑貨入れからアップルウオッチのリストバンドが見えた。アップルウオッチも、もうちょっと使いこなせるかなと思ったけど、見切りが早かった気がする。私自身は「ガジェット好き」という範囲には多分入らず、デジタルの小物に何でも飛びつくことはないし、粘り強く使い続けることもない。逆に言うと、私のような凡人にも使いこなせて、使い続ける意味が見いだせるものは浸透する。
我が家のグーグルホームはいま、当初の食卓からキッチンの脇に置かれている。両手がふさがっているときに、キッチンタイマーとしてたまに使うからだ。まだ電源は入っているが、なんだか時間の問題な気がする。
とはいえ、せっかく購入したので、もうちょっとこうだったら私にも使い続けられるのではないかという要素をいくつかあげてみよう。
会話の継続性。グーグルホームの場合、会話が一問一答形式で、最初の質問で解決できなかった場合、次の質問で補完しにくい。「大阪のおすすめレストランは」と聞くと「10件以上見つかりました。第一は◯◯で(中略)評価は3.8です」というので、そのあとに「次は?」と聞くと「すみません。お役に立てそうにありません」となってしまう。もう少し会話がうまく成立するようになってほしい。
アゲイン機能。天気を聞いて「さいたま市の本日の天気は◯◯です」と言われたが、ふっと気を抜くと聞き逃してしまうことがあるのだ。私の頭が悪いのだが、やはりスマホで検索したほうが画面に「晴れ」というマークが出るから認識しやすい。音声の認知力に個人差もあるだろうが、私は苦手だなと今回強く思った。「えっ。もう一回言って!」ということが非常に多いのだ。音声というインターフェースは他のことをしながらでも機器への入力が可能なので、出力された回答を聞き逃してしまうのだ。
偶然性。主に音声検索や音楽・ラジオなどの音声によった必然的なサービスが多く、偶然性によったサービスがまだ存在感がない。ただし、朝は「おはよう」と声をかけると直近のニュース(デフォルト設定)を教えてくれる程度だが、夜は「おやすみなさい」というと「宿題はもう終わりましたか」などとユーモアを発揮したりするので、このあたりから徐々にくだけてくるのだろう。

いずれにせよ、音声AIアシスタントが普及することを前提にすれば、ネット通販業界はもちろん、全業界で「音声入力対応」が求められるようになるだろう。スマホでの音声入力で検索されやすいようなウェブページづくりのほか、発語しやすい店名・商品名などのノウハウが必要になる。検索対策(SEO)の領域で、音声検索対策という視点が今後存在感を増すのも間違いない。
さて我が家のグーグルホーム。使いこなせないこちらのほうが「お役に立てずにすみません」という気持ちにならないように、今年は積極的に使っていきたいと、一応思っている。
[日経MJ2018年1月26日付]