2018年9月20日(木)

バングラの決済革命
SmartTimes (佐藤輝英氏)

コラム(ビジネス)
2018/1/19付
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 インドのお隣に位置するバングラデシュ。1.6億人と世界8位の人口を抱える大国だ。同国でもすでに携帯電話端末は1.4億台普及し、相当のモバイル大国になりつつある。

1997年慶応大総合政策学部卒、ソフトバンク入社。2000年ネットプライス(現BEENOS)社長、同社を上場に導く。15年シンガポールを拠点に起業家支援のBEENEXT設立

1997年慶応大総合政策学部卒、ソフトバンク入社。2000年ネットプライス(現BEENOS)社長、同社を上場に導く。15年シンガポールを拠点に起業家支援のBEENEXT設立

 政府は国家独立50周年を迎える2021年に向け、「デジタル・バングラデシュ」というスローガンを掲げ、ICT産業の育成、ICT活用による生産性の向上、e政府プラットフォームといった様々な施策を推し進めている。そんな同国で人々の生活に欠かせない存在になってきているのが、モバイルウォレットだ。

 同国で銀行口座を所有している人は、全体の5分の1程度と言われ少数だ。代わりにモバイル端末そのものが銀行のような機能を果たし、送金、支払い、デポジットなど様々な用途に使えるサービスが台頭している。中でも、14年からサービスを開始した「SureCash」は、直近の登録ユーザー数が1300万人と急激に伸びている。

 同社の躍進のきっかけになったのが、昨年3月にシェイク・ハシナ首相が行ったある発表だった。それまでバングラデシュでは、子供を抱える世帯に対して、3カ月に一度、教育給付金を配布していた。国民の教育環境の改善は同国の重要な国家政策だ。

 一方で、これまで給付金は現金によって配られていたため、膨大な事務コストがかかり、かつ、各家庭に届ける過程でかなりのリーケージ(オペレーションミスやその他の理由で全額が届かない問題)が発生していた。この問題を解決するために、全ての給付手続きをモバイルウォレットに対して行うと発表したのだ。

最寄りのSureCash代理店にて教育給付金を受け取る母親

最寄りのSureCash代理店にて教育給付金を受け取る母親

 これによって昨年はいっぺんに約1000万人の母親(給付金は母親に届けられる)の新しいモバイルウォレットが生成された。学校の先生達も教室を開放して母親達のモバイルウォレットの登録作業を手伝い、昨年は一気にデジタル化が進んだ。この教育給付金手続きのプラットフォームを担ったのがSureCashだったというわけだ。

 SureCashはこれらの教育給付金の受け取りに加え、実際に教育費を各種の学校に支払うオンライン決済のほか、公共料金、オンラインショッピングの決済などが可能で、すでに月間取扱額も1億米ドル以上とかなりのボリュームになってきている。

 特に最近は都市部で働く父親から、農村部に住む家族への送金にも使われており、まさに生活に欠かせないインフラへと進化しつつある。今年は国外に出稼ぎにでている家族からバングラデシュ国内への国際送金ができるサービス開始を予定しており、国境を超えて家族と民族をつなげるネットワークにもなりそうだ。

 07年にケニアでモバイル送金サービス「エムペサ」が誕生してから10年。今まさに世界のいたるところで、モバイルウォレット革命が起きている。

[日経産業新聞2018年1月19日付]

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