2018年10月22日(月)

持続可能な社会へ企業は力注ごう

2018/1/15 1:11
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環境問題や貧困、格差拡大などの課題を放置すれば経済成長は続かず、健全な社会を築くこともできない。こうした問題意識から、持続可能な社会に向けた取り組みを強めようという動きが世界で広がっている。なかでも重要なのが企業の果たす役割だ。

環境や社会問題とのつながりを考えて事業を進めることは、企業にとって社会的責任を果たすだけでなく、新たなビジネス機会を得たり事業のあり方を改善したりする好機にもなる。

自ら価値高める発想で

日本企業も得意分野を生かしながら、自らの企業価値を高めるという前向きな発想で臨みたい。

経済や社会の持続可能な発展という課題は、国連が「持続可能な開発目標(SDGs)」という国際社会共通の目標として推進している。貧困、健康と福祉、教育、気候変動など17の項目で目標を設け、2030年までに達成するよう加盟国に求める。

国連は途上国の開発に重点を置いてきたが、先進国も含めた包括的な課題に広げ、15年に採択したのがSDGsだ。地球環境問題やグローバル化の負の側面などに対応するには、あらゆる国の参加が必要だという問題意識がある。

日本政府は首相をトップにする推進本部を設置し、実施に向けた指針を打ち出している。経団連は昨年11月に7年ぶりに改定した企業行動憲章で「持続可能な社会の実現」を掲げた。

独ベルテルスマン財団などがまとめた国別のSDGs達成度によると、日本は昨年、157カ国中で11位だった。教育や産業・イノベーションなどで目標を達成する一方、男女間格差や気候変動など5分野の評価が低かった。

SDGsの推進は国際社会への貢献だけでなく、自らの社会の質を高めることにもつながる。日本はSDGsで最先端をいくモデル国家をめざすべきだ。

カギを握る民間の取り組みでは、既に実績をあげている企業も少なくない。

住設機器大手のLIXILグループは世界の衛生問題の解決に向け、新興国で簡易トイレを生産、販売している。製薬大手エーザイのように、熱帯病の治療薬を無償で新興国に提供している企業もある。こうした動きは単なる社会貢献の域を超え、長期の経営戦略としても大きな意味を持つ。

新興国の生活水準が上がれば、新たな市場の開拓につながる。グローバルな課題に取り組む姿勢は、企業や製品のブランド価値向上という面でも良い影響をもたらすとみられるからだ。

業界として国際的な規範をつくる動きも目立ってきた。資源メジャーなど世界20社以上が加盟する国際金属・鉱業評議会(ICMM)はSDGsが掲げる目標も踏まえて環境対応、人権の尊重など10の基本原則を打ち出している。

評議会に加盟する住友金属鉱山が鉱山開発にあたるフィリピンの先住民族について社内講習をしたり、精錬に使わない鉱物の堆積場を緑化したりする活動はその一環だ。環境対策はコストになるが、軽視すれば長期的に資源の安定確保はできない。

サプライチェーンの的確な管理も欠かせない。米コカ・コーラグループなど世界の食品、小売り大手は原料農産物の調達にあたり、環境や働く人の人権を重視する基準を設けている。

ESG情報の開示を

劣悪な労働環境で働かせたり、環境対策をおろそかにしたりすれば道義的な問題だけでなく、事業基盤を傷付けて結局自らにはねかえってくる。環境や人権の重視と事業の持続可能性は表裏一体だ。

株式市場では最近、企業の環境や社会分野などへの取り組みを評価する「ESG投資」が広がっている。年金基金などの資金が流入し、全世界の運用規模は20兆ドルを超えたもようだ。日本でも年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が昨年、ESG投資に乗り出した。

資産運用業界では、投資先企業の業績や財務の分析だけでなく、社会問題への取り組みを含めた事業評価のためのアナリスト育成も始まった。企業にとっては資本市場への情報開示がいっそう重要になる。業績・財務情報だけでなく、社会問題解決の取り組みなどもあわせて説明する「統合報告書」などを活用すべきだ。

本業のビジネスの力を使って環境や社会問題を解決し、それが株式市場での評価に結びついて事業の追い風にもなる。そんな好循環が根付くように企業も投資家も力を注ぎたい。

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