2018年4月21日(土)

不要な規制や慣習を取り除こう テック社会を拓く

2018/1/7 0:59
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 金融取引をIT(情報技術)で簡素にする「フィンテック」、医療や人事に人工知能(AI)やビッグデータを活用する「メドテック」や「HRテック」――。デジタルテクノロジーが、これまで無縁と思われてきた暮らしやビジネスの隅々にまで入り込む時代が来ようとしている。

 こうした技術革新の波にうまく対応できるかどうかが、経済や社会の今後を左右する。

人口減でも成長可能に

 新技術をうまく生かせば、人口減により市場の縮小や労働力不足が進む中でも、企業の成長や生活の質の向上を実現できる。そのために壁となっている規制や慣習があれば、思い切って見直したい。

 デジタル技術が新市場を生んだ先駆例が、一般住宅に有料で旅行者を泊める民泊だ。今年6月の新法施行で、民泊が全国で合法化される。これを機に大手企業が仲介業に名乗りを上げ、地方自治体が観光客誘致への活用を真剣に検討し始めた。2020年の市場規模は16年に比べ4倍に膨らむとの試算もある。

 従来の旅館やホテルは原則的に受付を置き、宿泊者の身元を直接、確認する義務があった。新法では民泊物件の場合、スマートフォンによる映像などでの遠隔確認を認めた。このため個人も民泊を手がけやすくなった。

 民泊の普及は、安全や安心をネット内の評価に求める消費者の判断基準の変化も浮き彫りにしつつある。

 民泊仲介の米エアビーアンドビーは宿泊者と部屋の提供者が互いに評価し、結果を公開することで不安を事前に払拭した。その結果、法的な位置づけはまだ曖昧だったにもかかわらず、17年7~9月期には訪日外国人の宿泊先に占める民泊の割合は12%に達した。

 これまでの規制の多くは消費者の安全や安心を目的に掲げ、新規参入に厳しいハードルを設けたり、サービスの内容を細かく規定したりしてきた。

 しかし誰もが手軽に情報発信できるようになり、利用者自身がサービスの水準や供給者の信用度を裏付け、信用を保証することが一定程度、可能になった。

 日本人旅行者でも若い世代を中心に、海外や国内で民泊を利用する人は多い。国の認定などに頼らず、利用者自身による評価を安心のよりどころとする人が増えている証拠といえる。

 テック社会での新たな規制やルールは、こうした技術の進化や機器の普及、消費者の意識の変化を前提にしたものでありたい。

 16年、京都府京丹後市で、一般の人が自家用車に有料で客を乗せるライドシェア(相乗り)サービスが始まった。過疎地の特例としての解禁だが、通院などで平均して毎月60回以上の利用がある。

 タクシー業界は利用者の安全、安心の確保を理由にライドシェア解禁に反対を続けている。しかし移動の選択肢の広がりは大都市でも歓迎されることは、米欧やアジアでの普及が証明している。

行政手続きもIT化を

 中国ではライドシェアはもちろん、シェア自転車、無人コンビニ、スマートフォンを使った手軽な決済など、低コストで快適な生活サービスが続々と誕生し、普及している。規制や慣習にこだわり、改革が遅れれば新ビジネスの芽を摘みかねない。

 法人登記などの手続きが役所の窓口での対面作業、紙の書類の作成や交付、押印などを原則としている点も、起業や商取引などにマイナスに働いていると指摘する声も産業界からは上がっている。オンライン手続きが可能な部分は、思い切って移行していくことを検討すべきだ。

 ものづくりも対応を急ぎたい。ドイツの自動車産業などでは設計から試作、安全試験まですべてをデジタル技術による仮想空間で済ませるバーチャルエンジニアリングという手法が普及し、効率的で高性能な商品の開発につなげている。

 実物がない状態での性能の評価試験も認められているという。日本のメーカーや政府も、こうした新しいものづくりの手法への対応に真剣に取り組みたい。

 介護や医療などのヘルスケア、金融、教育と、規制や慣習がデジタル技術を応用する際の壁になっている分野は多い。飛躍の好機を失わないよう気をつけたい。

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