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広がる「好きなだけ休暇」

新風シリコンバレー (ロッシェル・カップ氏)

無料のグルメ昼食、会社でのマッサージサービス、職場への犬の連れ込み可――。シリコンバレーの会社は従業員に魅力的な特典を提供している。こうした特典がシリコンバレー以外の米国の地域に広まっているのをあまり見ることはない。しかし1つだけ例外がある。無限休暇制度だ。

無限と言っても、休暇をいつでも無制限にとっていいというわけではない。職務内容をこなし、上司の了解を得る必要がある。しかし、それを満たせば、好きなだけ休むことができる。

シリコンバレーでは、ネットフリックス、ヴイエムウェア、エバーノート、リンクトインなどがこの制度を採り入れている。従業員を引き寄せるだけでなく、事務的な手間が省ける。未消化の有給休暇を負債にしなくてもよい。そして、最大の特徴は、会社が従業員に信頼を置いている証しになっていることだ。

背景には、高レベルの仕事を任せている知的労働者に、細かいルールや制限をかすのは矛盾しているという考えがある。仕事に責任を持てる人であれば、休暇を取ることに関しても十分な責任を負えると、会社側は期待する。

実際はどうなのか。ヴイエムウェアで働いているマネジャーに聞いてみた。

その人は1年に合計で4週間ぐらい休んでいるらしい。そのうちの1週間は何回かに分けて消化する。2週間は趣味の音楽の合宿への参加に充て、残りの1週間でバカンスに行く。別の人は年に1回、1カ月連続で休む。観光地に別荘を借りて母親と一緒に充実した時間を過ごしている。

ヴイエムウェアの広報担当はこう語る。「シリコンバレーでは仕事が何よりも大切になりがちだ。無限な休暇があるからこそ、従業員は自分の緊張をほぐすことができ、そしてコンピューターから離れて、自分及び家族をケアできる」

シリコンバレーの無限休暇制度の良さは他の地域でも認められつつある。無限休暇制度を導入した企業としてニュースになったのがゼネラル・エレクトリック(GE)だ。自社の企業文化変革の一環として採り入れたという。

ボストンの近くに本社を持つクロノスというソフトウエア開発会社も、無限休暇制度を導入した会社の1つである。優秀な人材を採用したかった同社は、従業員にとって有利なものを用意することが必要だと感じた。無限休暇制度がその対策として使われた。

クロノスが無限休暇をスタートしたのは2016年1月。そして、この年はクロノスにとって最も成績の良い年となった。従業員の仕事満足度と仕事への取り組み度合いを示す指標の「エンゲージメント」は、過去最高レベルに伸び、離職率はこれまでで最も低い数字になった。社長はそれを見て、これらの結果と制度の導入が無関係であるはずがないと感じたという。

米国でも優秀な人材を採用して定着させることがより重要になっている。シリコンバレーの企業を見習って無限休暇制度を採り入れる会社は、これから先さらに増えると予想される。

[日経産業新聞2018年1月9日付]

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