2018年1月22日(月)

記録ずくめの株高が迫る真の改革

社説
2017/12/31付
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 2017年が終わる。日本経済の鏡ともいうべき株式市場をふり返ると、今年は記録ずくめの1年だった。株価上昇は消費者や企業経営者の心理を前向きなものにする。株高を日本経済を真に改革する力にもしたい。

 大納会の29日、日経平均株価の終値は2万2764円94銭と、16年末に比べて3650円57銭(19%)高く引けた。日経平均は26年ぶりの高値水準であり、暦年でみて12年から6年続けての上昇はバブル崩壊後では最長だ。

「適温」に安住するな

 今年の株式市場はこのほか、2月から3月にかけて中堅企業の株価を映す日経ジャスダック平均が13年ぶりに21日続けて高くなったり、10月には日経平均が史上最長となる16日連続の上昇を記録したりした。

 世界はどうか。年始に初の2万ドル台に乗せた米ダウ工業株30種平均の年間の上昇幅は4956ドルと過去最高だった。ドイツのDAX指数は日本と同じく6年続けて高くなった。

 日本市場はグローバルな趨勢に引っ張られている面が大きい。多くの海外市場で株価が最高値圏にあるのに、日経平均はバブル期のピークの約6割にとどまっている。この現実を直視すれば株高に安穏としてはいられない。

 世界の株価上昇の起点である米国では、1月にトランプ大統領が就任した。予想どおり貿易や外交の面で「米国第一主義」の政策を打ち出し、投資家はおおいに戸惑った。しかし、金融規制や法人税の改革に着手したことなどを市場は好意的に評価した。

 欧州では「反欧州連合(EU)」を掲げる大衆迎合主義(ポピュリズム)が勢いを増し市場が混乱することが予想された。ところがフランス大統領選などを見る限り、懸念は後退している。政治面の不透明感が弱まったことがユーロ圏の投資と消費を刺激し、独などの株価上昇を促した。

 新興国では輸出やインフラ投資に支えられた中国経済が、減速しつつも高水準の成長を保っている。税制や企業法制などに関する改革への期待が高まったインドも株価上昇にわいた。

 各国の中央銀行が景気に配慮した金融政策をとった点も見逃せない。米連邦準備理事会(FRB)は今年3度の利上げをしたが、ゼロ金利解除後に引き締めをゆっくりと進めてきた姿勢は株式市場で歓迎されている。

 緩やかな成長が続く一方、低インフレで中央銀行も引き締めを急がない状態を「ゴルディロックス(適温)経済」と呼ぶ向きが増えている。日銀が長短金利操作や上場投資信託(ETF)購入などで、景気と株価を支える日本も、適温状態の中にいる。

 18年は、国も企業も適温の居心地の良さからあえて抜け出る覚悟が求められる。記録ずくめの株高も、そうした日本の変身を先取りしたものだ。

 発足から丸5年たった安倍政権に対して、私たちはくり返し構造改革を求めてきた。社会保障制度や労働市場など改革を必要とする分野は数多い。金融政策と財政に頼った景気刺激策だけでは、国の外から長期の投資資金を呼び込むことが難しくなる。

 企業も足元の好業績に満足することなく、競争力をさらに磨く必要がある。上場企業だけで100兆円を超える手元資金は、成長投資などにふり向けるべきだ。余裕ある企業は賃上げや株主還元の上積みをためらうべきではない。企業が動くことによって、経済の血液にたとえられるお金の巡りもよくなるはずだ。

新たな危機の芽点検を

 来年はリーマン・ショックから10年だ。世界がふるえた金融危機の記憶もよみがえる。新たな危機の芽が育っていないかどうか、点検する必要がある。

 世界の中央銀行が緩和政策を長く続けたため、市場のいたるところでマネーがだぶつき、合理的とは思えない価格形成も目につくようになった。

 例えば一時は年初来で20倍に値上がりした仮想通貨「ビットコイン」だ。仮想通貨の裏づけ技術である「ブロックチェーン」を社名に加えただけで株価が急騰する例も見られる。社名に「ドットコム」とつく企業の株価が上がった1990年代末の米ネットバブルをほうふつとさせる。

 株式市場では楽観が広がっている。だからこそ国も企業もリスクへの目配りを怠ることなく、改革を進めなくてはならない。株高に映る未来を引き寄せるものは、私たちの変わる力だ。

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