2018年4月22日(日)

欧州は改革で結束し安定の礎を

2017/12/29 1:07
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 2017年のはじめ、欧州は世界の波乱要因になるとの予測が出ていた。域内に流入する中東・アフリカからの難民や移民が急増し、テロも頻発し、欧州連合(EU)加盟国で移民排斥を唱える極右政権が相次ぎ生まれる――。

 そうした懸念はひとまず杞憂(きゆう)に終わった。3月のオランダ下院選挙で中道政党が第1党を死守し、4~5月のフランス大統領選では中道のマクロン氏が勝利した。世界の金融市場や実体経済に悪影響を与える事態を回避できた点は評価したい。

極右伸長に警戒解くな

 しかし、過度の楽観は禁物である。9月のドイツ下院選では極右政党が初めて議席を獲得した。オーストリアでも極右政党が政権入りした。18年春のイタリア総選挙では、大衆迎合主義(ポピュリズム)政党の躍進が見込まれている。既成政党への不信感から、極右やポピュリズム政党が今後も勢いづく可能性は残る。

 欧州は開かれた自由民主主義や市場経済、法の支配や基本的人権といった価値観を堅持できるか。警戒を怠ることはできない。

 足元でEUを揺さぶっているのはポーランドだ。政権の司法介入がEUの理念である法の支配の原則に反しているとして、EUの執行機関である欧州委員会はポーランドを対象に制裁手続きに入るよう提案した。

 重大なEU条約違反になりかねない行為を問題視したのは当然だ。EUから巨額の補助金をもらいながらEUの価値観に背を向ける。自らはユーロ圏ではないが、統合深化の恩恵は受けたい。そんなポーランドのいいとこ取りを許せばEUの秩序は保てない。EUは厳しく臨む必要がある。

 欧州にとって18年の課題のひとつは17年に続き英国のEU離脱である。英EUの交渉は18年から通商協議を含めた第2段階に入る。

 19年3月の英EU離脱からは一定の移行期間を置き、英国はEUの単一市場や関税同盟にとどまる。焦点はその後の自由貿易協定(FTA)などによる英EUの経済関係のあり方だ。まず英国が早く説得力のある将来像をEUに示す責任がある。

 正式なFTA交渉は19年3月以降になる。それに先立ち英EU双方は18年秋までに離脱条件を定めた協定に合意するとともに、通商分野の予備協議でも間合いをできるだけ縮めるべきだ。日本企業を含む世界が離脱に備えられるように最大の配慮をしてほしい。

 同時に、英国を除くEU加盟27カ国は結束し、二度と欧州統合が逆戻りしないように改革を遅滞なく進めねばならない。気になるのは、堅調な景気からか、政治指導者に慢心の兆しが見えることだ。

 EUの中核はユーロ圏19カ国だ。それなのに12月15日のEU首脳会議はユーロ圏改革の議論に深入りせず、実質討議を18年3月以降に先送りしてしまった。

 域内の最大の経済大国であるドイツで新政権の発足が遅れているため、EUとして重要な結論を出しにくくなっている。メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)と第2党のドイツ社会民主党(SPD)は連立合意にむけた協議を急いでほしい。

 ユーロ圏改革は預金保険制度の一元化にメドをつけ「銀行同盟」を完成させるのが急務だ。

ユーロ圏改革を急げ

 金融安全網である欧州安定メカニズム(ESM)を欧州通貨基金(EMF)に衣替えさせるのも妥当だろう。域内銀行の破綻時の資金手当てもできるようになれば、金融危機への耐性は高まる。

 ユーロ圏の財務相や予算の可否の議論は後回しでいい。まずEU首脳は18年6月をメドにユーロ圏改革の明確な全体像を示してほしい。もちろん財政「規律」重視のドイツと、「統合」に軸足を置くフランスの歩み寄りが要る。

 独SPDのシュルツ党首は米国にならって、EU加盟国がさらにEUに権限を移す「欧州合衆国」を実現すべきだとの考えを示している。これに対し、ファンロンパイ前EU大統領が「欧州への懐疑主義はなお根強く残っている」と拙速を戒めたのはもっともだ。

 いま欧州に求められているのは壮大なビジョンではない。域内に成長と安定をもたらす具体的な改革の基礎を固め、着実に実行に移すことだ。その点を欧州各国の指導者は忘れず、果敢に行動する18年としなければならない。

 日本とEUは経済連携協定(EPA)交渉を妥結させた。トランプ米大統領が保護主義的な政策に傾く中、欧州は日本とともに世界の自由貿易をけん引してほしい。

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