中国色に染まる東南アジア
SmartTimes (村松竜氏)

2018/1/5 6:30
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「いつ中国の大手は東南アジア市場にやってくるのか」。冒頭のセリフは、5年前に私が家族でシンガポールに移住してきたときの東南アジアの起業家や投資家の関心事だった。それがこの1~2年で「どうすれば中国大手に出資・買収してもらえるか」になった。中国の力が増しただけではない。東南アジアの市場とスタートアップが、スピードと資金力のある中国大企業にとって、勢力図を広げるに値する規模になったということだ。今や彼らは先を争って自分の会社を中国企業に売り込んでいる。その中で目立った会社から買われている。

新卒でジャフコに入社。担当していたGMOインターネットの上場後に決済のスタートアップを起業。2005年にGMOベンチャーバートナーズを設立。12年よりシンガポールを拠点に活動

新卒でジャフコに入社。担当していたGMOインターネットの上場後に決済のスタートアップを起業。2005年にGMOベンチャーバートナーズを設立。12年よりシンガポールを拠点に活動

アリババ集団や騰訊控股(テンセント)による出資・持ち分比率引き上げのニュースは毎週のように東南アジアのメディアを騒がしている。アジアの電子商取引(EC)や決済などの巨大市場の有力企業には彼らの旗がはためきつつある。

「中国色」に染まった東南アジア市場で、日本のネットサービス事業者は、どのように事業ポートフォリオをつくるべきか。主な進出の形態を分類すれば以下のようになるだろう。

(1)国内と同じサービスを対象国で展開し、母国市場の顧客を送客する(2)現地のサービス提供会社に資本参加し、ローカル顧客と経営資産を同時に入手する(3)国内と同じサービスを対象国で展開し、現地でマーケットプレースを根づかせる――。中国大手は(1)と(2)を同時に展開している。その典型がアリババ集団の電子決済サービスのアリペイだ。(3)はライドシェアの米ウーバーが行っている。

シンガポールやマレーシアでは、多くの飲食店やタクシーでアリペイに対応した端末が置かれている。現地の大手銀行やタクシー大手と矢継ぎ早に提携しているのだ。さらにアリババは当地の主なスタートアップ企業の大半を買収したり、出資したりしている。それもかなりの高額でだ。やがて最も難易度が高い(3)の段階に移行するだろう。

だが、中国大手は規模の大きさゆえに、B2B(法人向けビジネス)や市場規模が小さいB2C(消費者向けビジネス)の領域にはあまり食指を動かさない。

中国への対抗意識が強い国では、政府主導の決済サービスの動きが活発だ。その周辺に商機がある。

そして進出してきた中国勢をうまく利活用するビジネスがこれから興隆してくる。私たちや私たちの投資先は、中国勢が提供する決済手段をそれ以外の決済手段とまとめてEC会社に提供している。多様な決済手段のひとつひとつに対応するのは手間だからだ。

東南アジアでの出資や提携は、人脈・信用・スピードの3つが勝負だ。GMOペイメントゲートウェイでは、副社長である私が現地に住み、現地人材をグループメンバーにしている。短期間でアジア中に拠点を形成、フィンテック分野のスタートアップと提携した。

日本企業でもユーザベースやメルカリは共同創業者が海外の進出先に住んで事業を進めてきた。経営陣が現地に居住して迅速にビジネスをつくっていくことに集中したい。

[日経産業新聞2018年1月1日付]

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