2018年9月24日(月)

等身大の中国捉え真の互恵関係を

2017/12/25 22:57
保存
共有
印刷
その他

 世界の人々にとって刻々と変化を遂げる中国を等身大で捉えるのは大変な作業である。ある人は10年前に住んだ経験から、最近見ていない今の中国を語る。また、ある人は5年前に出張した時の見聞から中国の現状を分析する。

 残念ながらいずれも今の中国の実情を捉えることはできない。中国全土に伸びる高速鉄道網や地方都市に広がる地下鉄網は10年前にはなかった。誰もがスマートフォンを持ちキャッシュレスで生活する「スマホ経済」は5年前には影も形もなかった。

時代遅れの中国認識

 成長の速さ故に中国認識はすぐ時代遅れになる。半面、中国共産党の根本思想は変わらない。むしろ独裁維持へ組織を強化し、言論も締め付けている。1986年、最高指導者の鄧小平氏は普通選挙を巡り「20年、30年後には実施可能かもしれない。反対しない」と語ったが、実現の兆しもない。

 先の共産党大会で習近平総書記(国家主席)は権力集中を進めた。そして政府、軍、民間、教育などあらゆる組織と場所で共産党が全ての活動を指導する方針を強調した。中国の上場企業の多くが定款を変更し、共産党が経営判断に深く関わることを容認した。

 比較的、自由だった外資系企業にも共産党の末端組織が設けられ、企業の意思決定で党の存在感が増す。自由な企業活動を制約しかねない措置は従来の法体系と整合性がとれない。中国の党・政府は外資を含む企業側の強い不満の声を真摯に受けとめるべきだ。

 今後の経済運営の指針を決めた中央経済工作会議では「国有企業をより強く、より優秀に、より大きくする」とした。民間活力を生かすため国有企業の民営化に取り組むどころか、より大きくするという。経済への共産党の支配強化は、成長を阻害しかねない。

 心配なのは不動産バブルだ。金融リスクには、今後3年かけて対処するとした。バブルを一気に潰すと副作用が大きい点も考慮した。ただ地方の住宅価格はなお上がっており、調整が遅れるならバブル崩壊の危険度が余計に増す。

 習氏は共産党大会で2035年に現代化建設を基本的に終え、建国100年の21世紀半ばには強国を実現すると公約した。これは遅くても35年までに、先頭を走る米国を経済面で抜き去り、50年には戦争でも勝てる総合的な国力をつける目標を示したと解釈できる。

 5年に1度の共産党大会で18年先、33年先まで見据えた超長期の「強国路線」が始動した事実は重い。世界はその中身にもっと注意を払うべきだろう。

 巨費を投じる人工知能(AI)発展計画は既に始まった。ビッグデータ活用で「デジタル中国」を実現するインターネット強国、宇宙技術強国など長期プロジェクトが目白押しだ。これらは25年まで国産技術の底上げを図る「中国製造2025」と連動している。

 対外政策では広域経済圏をめざす新シルクロード経済圏構想(一帯一路)に重点を置く。これは中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)とも関係が深い。

 「一帯一路」では安倍晋三首相が「大いに協力する」と前向きな姿勢に転じた。日本が打診した第三国でのビジネス協力は、日本の経済界からの要望も強い。今後は双方に利益をもたらす現実的な枠組みを詰める必要がある。

 中国の特異な経済システムが持続可能なのかは見解が分かれる。だが、もし中国が第一目標とする35年まで一定の速度で成長した場合、米中2大国の間に立つ日本は進路の調整を迫られかねない。米国との同盟を維持・強化するのか、これを見直して、中国との関係を深めるのか、である。

首脳の頻繁な往来を

 とはいえ戦後一貫して民主主義を享受してきた日本と、独裁が続く中国の政治体制は根本的に異なる。安全保障上の立場の違いも北朝鮮の核・ミサイル開発問題への対処で明らかだ。日米同盟を基軸に中国とも経済中心に協調する。日本が選ぶべき道は限られる。

 第1次安倍政権が中国と「戦略的互恵関係」を結んで11年が過ぎた。沖縄県の尖閣諸島の問題を巡る反日デモなど厳しい時代も経験した。その後、両国を取り巻く世界は大きく動いている。

 なお成長し変化する中国をありのまま捉えるのは難しい。だが、戦略的に分析できる冷静な目を養わなければ未来は開けない。来年は日中平和友好条約の締結から40年になる。両首脳が再び頻繁な相互訪問に踏み出す好機だ。今こそ互恵の名に恥じぬパートナーシップ関係を再構築すべき時である。

秋割実施中!日経Wプランが12月末までお得!

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報