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夜中の原稿だけれども

新風シリコンバレー (ジョアナ・ドレイク氏)

日本だけでなく、シリコンバレーでもワークライフバランスの実現が課題になっている。自分の健康や家族を犠牲にしてでも、仕事を最優先する考え方は、スタートアップの起業家たちの間で強く表れている。なぜなら、彼らが成功する確率は1%もしくはそれ以下でしかないからだ。

彼らは最少の人数で一刻も早くプロジェクトを終えて結果を出そうとする。しかし、もし初期段階でバーンアウトして(燃え尽きて)しまえば、その後に待ち受ける長期的なレースに生き残ることはできない。

1990年代後半の「ドット・コム・バブル」のときには、栄養ドリンクのレッドブルを片手にピザをかじり、オフィスで仮眠をとりながら、夜通しプログラミングを競う「ブロカルチャー」が持てはやされた。

このような「オールナイター」のプログラマーが称賛される時代は終わった。それでもアマゾン・ドット・コムやグーグル、アップル、フェイスブックが支配するテクノロジー業界では、プロダクトサイクル(納期)が短縮され、管理職者はより短い時間でアウトプットを絶え間なく増やすことを求められている。

長時間労働がスタッフの健康をむしばみ、問題解決や仕事の質を下げてしまうことを、リーダーたちはよくわかっているはずだ。私たちには、米国や欧州、日本に広がるチームを長年にわたって統率した経験がある。そこから学んだ、持続可能な企業のカルチャーづくりの方法をいくつか提案したいと思う。

まず、自社にとって最も大切な資産は人的資産であることを公に示すことだ。無理なく働き続けられるようにするための投資はバーンアウトを防ぎ、社員の成功や満足度を高める。投資を上回る利益を得られる。

次に、管理職者が部下を多面的に理解し、共感できる環境で、必要なサポートを提供することだ。例えば出産や家族の病気、心身の健康のための療養が必要な社員に対し、在宅勤務ができるようにする。こうすれば、長期的な生産性向上につながり、組織への忠誠心を高められる。

感謝の気持ちを定期的に伝えることも忘れてはならない。優秀な社員は役職に関係なく、定期的に表彰する。頼りになる同僚に感謝の気持ちを示すプレゼントを贈ったり、直属の部下に休暇日を授与したりすることは、金銭的な報酬よりも喜ばれる場合が多い。

そして、一人ひとりの社員が生き生きと仕事ができるように、「働き方」を考察して、仕事の環境やツールを整える。具体的には、必要不可欠な場合を除き、社内のコミュニケーションをビデオ会議やチャットで行う。顧客と接している社員に権限を委ねる。決定権を明確にして稟議(りんぎ)に費やす時間を減らす。データに基づいた仮説づくりや迅速な決定プロセスを奨励し、長期間におよぶリサーチを極力控える。

とはいえ、私はこの原稿を夜中の1時半に書いている。読者の皆さんが実行されているワークライフバランスの取れた働き方をぜひお聞かせいただきたい。

[日経産業新聞2017年12月26日付]

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