2018年9月24日(月)

長期政権にふさわしい構造改革を

2017/12/25 1:10
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 安倍政権が26日に発足から丸5年を迎える。10月の衆院選で自民党が圧勝し、安倍晋三首相は政権運営の基盤を固め直した。経済の先行きにやや明るさが見える今こそ、持続的な成長と財政健全化に道筋をつける改革に長期的な視点で取り組むべきだ。

 首相は就任以来、経済政策「アベノミクス」で金融緩和、財政出動、成長戦略という3本の矢を打ち出した。

安定政権の力を生かせ

 確かに景気回復は戦後2番目の長さになった。消費者物価上昇率は2%の目標に達していないものの、政府の「物価が持続的に下落するデフレではない状況を作り出した」との説明には一理ある。

 だが慢心は禁物だ。雇用情勢の改善で人手不足が拡大しても賃金上昇率はなお鈍く、個人消費や物価上昇率を下押ししている面がある。背景には日本経済の将来への企業の成長期待が低下している事情がある。

 経済の実力を示す潜在成長率は1%未満にとどまり、アベノミクス始動から上昇していない。安定政権の力を生かし、規制緩和や労働市場などの構造改革を推進していく努力はなお不十分だ。

 労働時間に縛られない「脱時間給」の働き方を打ち出したのはいいが、3年半も棚ざらしなのは問題だ。裁判で解雇無効の判断が出た後に金銭で労使紛争を解決する制度も実現のメドがたたない。

 最大の課題は、持続可能な財政や社会保障といった中長期の懸案への答えをはっきり打ち出せずにいることだ。日本の財政は先進国で最悪の状態にある。少子高齢化は刻々と進展し、団塊世代が全員75歳以上になる2025年以降は医療や介護などの社会保障費の膨張圧力がさらに強まる。

 にもかかわらず社会保障を支える消費増税を2回も延期し、国と地方をあわせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字にする目標時期を20年度から先送りした。目先の経済成長による税収増だけで財政健全化を達成するという発想があるなら危うい。

 首相は第2次安倍内閣の発足以降、約60カ国を訪問した。積極的な首脳外交は、国際社会での日本の発言力を高めるうえで重要な役割を果たしている。

 米国を除く11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉の妥結は成果として評価できる。国を開き、世界やアジアの成長を取り込んで日本経済の活性化につながる要素が大きいからだ。

 ただ中国や韓国とはハイレベルの相互訪問が途絶えたままで、日中韓首脳会談の日本での開催日程もいまだに固まらない。

 中韓両政府が歴史問題で反日的な姿勢を強めている要素はある。しかし中国は経済と安全保障の両面で日本にとって無視できない重要な存在となった。未来志向の協力体制を築いていくため、双方が一層の努力をすべきだ。

 北朝鮮による核・ミサイル開発の平和的解決は、当面最大の外交課題である。緊密な日米同盟を土台として「北朝鮮への圧力を最大限高めていく」という安倍政権の基本的な戦略は正しい。

 国連安全保障理事会が採択した北朝鮮への経済制裁に実効性を持たせるには、中国やロシアの協力が不可欠だ。万が一、武力衝突が起きた場合の日本の防衛や海外での邦人保護、難民対策への備えも急ぐ必要がある。

憲法改正、拙速でなく

 首相は憲法改正への意欲を繰り返し表明している。自民党は9条への自衛隊明記、緊急事態条項、参院選の合区解消などを優先課題と位置づけ、18年の通常国会にも改憲案を提出したい考えだ。

 時代に合わせた憲法論議は重要であり、議論そのものをタブー視する姿勢は望ましくない。一方で改憲案の国会発議には衆参両院の総議員の3分の2以上の賛成が必要で、最終的には国民投票で過半数の賛成が条件となる。

 改憲のハードルはなお高い。どの条文をどう改正するかについて建設的な議論を積み重ねていくことが重要だ。首相が言及した「20年の改正憲法の施行」に間に合わせるために、拙速に意見集約するような対応はすべきでない。

 首相は18年9月の自民党総裁選で3選をめざしている。実現すれば次の任期の21年まで政権を率いる可能性が出てくる。

 6年目に入る安倍政権は、19年4月末の天皇陛下の退位や20年夏の東京五輪・パラリンピックの先を見据え、長期政権にふさわしい改革を着実に進める責任がある。

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