2018年10月21日(日)

問われるニュースの品質 ポスト・フェイクの幕開け
先読みウェブワールド (藤村厚夫氏)

コラム(ビジネス)
2017/12/28 6:30
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ドナルド・トランプ氏が米国の第45代大統領に就任したのが、今年1月。大統領選での勝敗が決したのが昨年11月だ。米国内だけでなく、世界がトランプ氏に振り回されることになってから1年がようやく過ぎるところにきた。その間、筆者が身を置くメディアやニュースの業界が受けた衝撃の大きさと、変化の数々は、1年をはるか昔と感じさせるほどだ。

起きた最大の変化は「フェイクニュース(デマニュース)」への注目だろう。

大統領選期間中、他陣営を陥れるフェイクニュースが飛びかった。選挙につきものの怪文書のレベルをはるかに超え、ロシアによる謀略までが指摘された。

これに対処すべく、政治家の言説やニュースの真偽を逐一確認する「ファクトチェック」への期待も、かつてないほどに高まった。多くの非営利ファクトチェック団体が、多額の資金拠出を受ける一方、「ニューヨーク・タイムズ」や「ワシントン・ポスト」ら伝統メディア、「バズフィード」ら新興メディアが、競うようにしてこれに乗り出すこととなった。

動きは、難民問題や英国の欧州連合(EU)離脱などで揺れる欧州各国に飛び火。さらに大統領選で揺れる韓国に、そして日本にも広がることとなった。筆者も関与する「ファクトチェック・イニシアティブ」が立ち上がったのも今年だ。

フェイクニュースの時代は、権力監視に熱心なジャーナリズムにとって、その存在感を高める最高の舞台ともなった。信頼のおけるメディアに対して、消費者は支払いを惜しまないとの兆しも見えてきている。

事実、タイムズは電子版購読者を6割も伸ばし(第3四半期の前年同期との比較)、ポストも今年の9月は昨年9月の3倍と急伸させたという。

SNS(交流サイト)大手のフェイスブックやツイッター、そして検索最大手グーグルへの批判が高まったのも、この1年に起きた変化だ。フェイスブックがフェイクニュースの拡散を担ったとの批判は早くからなされてきた。また、これら3社いずれもが、ロシア機関が世論工作をねらったとされる意見広告を掲載し、米議会の調査委員会で聴聞される事態にもなった。

影響力の大きさをつねに誇ってきたテクノロジー企業だが、その倫理や弱点に批判が集まり、真摯な姿勢が求められる時期に入った。

国内でも、医療健康分野で、品質の低い記事を粗製乱造していた新興メディア「ウェルク」が昨年、閉鎖された。急成長の原因ともなったのが、記事を検索結果の上位に表示してきたグーグルだとの指摘がある。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。東京都出身。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年からスマートニュース執行役員。東京都出身。

グーグルはその後、検索結果をつかさどるアルゴリズムの改善に取り組み、この12月にも、不正確な医療健康情報を排除する大規模な改善を発表した。ウェルク以後も存在していた、粗製乱造を指摘される記事が急激に姿を消す結果となった。

ニュースの真偽が疑われ検証される時代に入り、ファクトチェックと信頼性の高いメディアへのニーズが高まる。さらに、情報の品質という点から、メディアが本格的に選別される時代に入った。「ポスト・フェイクニュース」の時代は、情報の品質を改めて問う時代でもある。

[日経MJ2017年12月25日付]

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