2018年7月17日(火)

中長期的な効果が試される米税制改革

2017/12/21 23:29
保存
共有
印刷
その他

 法人税減税を柱とする米国の税制改革法案が上下両院で可決された。法人税率の引き下げや、設備投資の全額を課税所得から差し引く即時償却の導入は経済の拡大を後押しする内容といえる。

 ただ、巨額減税は財政の悪化につながる恐れもある。潜在成長率の引き上げにどこまで結びつくかは見方が割れており、中長期的な効果は今後試されることになる。

 国際的に高かった法人税率の引き下げは理にかなっている。海外収益には原則的に課税しない仕組みを取り入れるのも、国際標準に合わせたものだ。米国企業の間では海外で稼いだ資金を国内に還流させたときに重い税がかかるのを嫌って、資金を海外に滞留させる傾向が強かった。

 設備投資の即時償却は投資を促す効果があり、期限が5年とされたこともあって、投資が前倒しで進む可能性もある。企業が減税や海外からの資金還流で増えた手元資金を自社株の買い戻しなどに使えば株価を支える要因にもなる。

 重要なのは今回の税制改革が一時的な需要刺激や資産価格上昇にとどまらず、持続的な成長力の底上げにつながるかどうかだ。

 企業が生産性向上に結びつく投資を継続的に増やしたり、海外企業の対米投資が伸びたりすれば、トランプ政権がめざす「強い米国」の復活につながりうる。その成否は、通商政策を含めた政権の経済政策運営への信認が高まるかどうかによっても左右される。

 個人所得の減税については、最も恩恵を受けるのは高所得者とみられており、苦境にある中間層を支えるという政権公約には必ずしも沿っていない。減税期間も期限付きで、中間層の不満解消につながるかは疑問だ。

 より大きな問題は減税の財源が足りず、財政赤字を膨らませる公算が大きいことだ。政権や議会の共和党指導部は成長加速で財政悪化は防げるとしているが、10年で1兆ドル程度の赤字拡大につながるとの見方が有力だ。減税のつけを将来に回す決定ともいえよう。

 米国の法人減税は、国際的な税率引き下げ競争を促す可能性がある。日本は法人税率の段階的な引き下げを進めてきたが、「トランプ減税」の結果、税率は米国よりも高くなる。日本の国際競争力を高めるには、起業や優秀な人材確保がしやすい仕組みづくりなどと合わせ、法人税負担の軽減策を改めて検討し直す必要があろう。

保存
共有
印刷
その他

関連キーワード



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報