2018年1月21日(日)

米国企業だけじゃない 日本も起こせる革新
奔流eビジネス (アジャイルメディア・ネットワーク取締役 徳力基彦氏)

コラム(ビジネス)
2017/12/22付
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 12月8日、現代マーケティングの父として知られるフィリップ・コトラー氏を中心に運営されている「ワールドマーケティングサミット東京2017」が開催された。今年のテーマは「イノベーションがもたらすマーケティング変革」だ。

エアビーアンドビーは宿泊施設の概念を変えた

エアビーアンドビーは宿泊施設の概念を変えた

 インターネットの普及が様々なイノベーション(革新)を促進しているのは間違いないが、日本企業の視点からすると残念な現実もある。世界中の情報を検索できるサービスを生み出したグーグル、世界中の人々とつながるプラットフォームとなったフェイスブック、宿泊施設の概念に革命を起こしたエアビーアンドビー、移動手段の発想を変えたウーバー。多くを米国企業が主導しているのだ。

 一方、現在の日本人・日本企業は既にあるものを良くするのは得意だが、全く新しい製品やサービスを生み出すのは苦手とよくいわれる。さらに最近は組織の硬直化、いわゆる大企業病も指摘され、今年は毎月のように大企業の不祥事がメディアを賑わせた。世界のデジタル革命に乗り遅れているという悲観論も少なくない。

 そんな論調に希望を持たせてくれたのが、今回のサミットだった。日本企業でも日本人でもイノベーションが起こせるはずという自信をくれた2つの講演があったのだ。

 ひとつは富士フイルムホールディングスの古森重隆会長だ。

 富士フイルムは2000年当時、売り上げの6割を占めていた写真フィルムのビジネスがあっという間に縮んだ歴史がある。富士フイルムの強力な競合企業であった米コダック社は、時代の変化に対応できず破綻した。しかし富士フイルムは自ら変化を作り出す側にまわり、デジタルイメージングやヘルスケア・化粧品などの新事業分野に積極的に挑戦することでグループとしての成長を続けることができた。

 この成功はもちろん、経営陣の判断と社員の努力の上に成り立っており、日本企業だから成功したという話にはならない。ただ米国企業が常に変化に強く、日本企業が弱い、というわけではないことを示す意味では重要な事実といえるだろう。

 もうひとつはネスレ日本の高岡浩三社長が紹介していた話だ。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。14年3月から取締役最高マーケティング責任者(CMO)。

とくりき・もとひこ 名大法卒。NTTを経て06年アジャイルメディア・ネットワーク設立に参画、09年社長。14年3月から取締役最高マーケティング責任者(CMO)。

 ネスレ日本はネスレグループの先進国市場の中でも際だった高い利益率と成長率を誇っている。この成功に向け、ネスレ日本の全社員がマーケティングを顧客の問題解決ととらえ、イノベーションの種を探している。

 象徴的なのが、ネスレ日本が続けているイノベーションアワードだ。年に1回、全部署の人間が自分の部署の顧客の問題に解決策を考え、会社に提案する仕組みだ。勝者には賞金やスイス旅行があるそうだが、一番のモチベーションは自分のアイデアを会社が責任を持って実行するところにあるという。

 そんなネスレ日本でも、最初から誰もがイノベーションの種を正しく評価できたわけではなかった。初期の頃は部下のアイデアを上司が正しく評価できていないことが多々あったそうだ。

 2つの事例を見る限り、イノベーションを生む能力は、国民性だけで決まるのでも、会社の規模や業種で決まるのでもない。会社として個人として努力することで培うことができる能力といえるかもしれない。

 実際、これまでに比べれば、最近は日本発のイノベーションの可能性を感じることもある。メルカリはフリーマーケットアプリで世界に挑んでいる。スマートニュースなどの新しいサービスも、海外進出に真剣に挑戦することが増えている。

 日本でイノベーションが生まれにくい一番の理由は、多くの日本人がイノベーションを生み出すことを諦めてしまっているからかもしれない。まずは、イノベーションを起こせる前提で動いてみてはどうだろうか。

[日経MJ2017年12月22日付]

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