2018年7月22日(日)

商工中金の抜本改革は完全民営化が筋だ

2017/12/18 22:59
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 組織ぐるみの不正融資が発覚した商工組合中央金庫の改革議論が大詰めを迎えた。商工中金は政府系金融機関としての役割を逸脱したにとどまらず役割そのものを終えている。完全民営化し民間金融機関として再出発するのが筋だ。

 不正の舞台は税金を原資に金利を割り引いて、苦境に直面する中小企業に低利で貸し出す「危機対応融資制度」だ。商工中金は融資先の財務諸表を悪く改ざんするなどし、本来なら制度の対象外である優良企業にも融資を実行していた。社内にノルマまで設定し、地方銀行など民間の取引先を横取りした。明白な民業圧迫である。

 経済産業省は11月に有識者による「商工中金のあり方検討会」を発足させ、近く改革の提言をまとめる。「商工中金は解体的な出直しが必要」と世耕弘成経産相も認めるが、問題はその中身だ。

 不正を放置していた監督官庁の経産省幹部経験者がトップを務める経営体制は、民間出身者に委ねる。政府の出資を残したまま業容を縮小する案も浮上している。だが、それだけでは不十分だ。

 日本の貸出市場はオーバーバンキング(銀行過剰)が鮮明で、国の信用力をテコに優位に立つ政府系金融の必要性は薄れた。そもそも2005年の政府系金融改革の一環として15年度までに商工中金は完全民営化するはずだった。

 民営化の棚上げは08年のリーマン危機がきっかけだ。東日本大震災など深刻な自然災害を含め、企業の資金繰りが極度に悪化した際の危機対応制度の意義は否定しない。しかしそれを商工中金が一手に担う必然性は乏しい。制度を手掛けやすいように工夫すれば、支店窓口の多い民間で十分担える。

 「円高対応」や「原材料高(円安)対応」などと、危機の対象を拡大し、惰性で維持してきた経産省の姿勢にも問題がある。

 存在意義がなくなったといっても、全国約100支店、4千人近い人員を抱える商工中金を即時廃止するのは現実的ではない。むしろ大胆なスリム化と完全民営化をできるだけ早期に実現し、民間と同じ土俵で競争させるべきだ。商工中金には中小企業の事業承継など一定のノウハウの蓄積がある。

 経営が悪化した企業を手助けしない「レイジーバンク(怠惰な銀行)」とまで検討会で酷評された地銀経営者に刺激を与え、日本経済の基盤である中小企業群を鍛え育てる方策を競い合うべきだ。

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