2019年2月23日(土)

春秋

2017/12/17 1:01
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米国では名誉毀損の民事訴訟で、真実性の立証責任は裁判を起こした原告側が負う。英国はその逆で、被告にその責任がある。日本も英国と同様だ。が、被告が真実性の証明に失敗しても真実と信じるに足る、合理的な根拠を示せば免責される。米英の折衷といえよう。

▼公開中の映画「否定と肯定」を見て法制度の違いを知った。「ホロコースト」を否定する英国の歴史家が、米国のユダヤ系歴史学者の著書で名誉を毀損された、と英国王立裁判所に訴えた。2000年に実際にあった訴訟を作品にした。「否定論者をいかに否定するか」。被告の立証論理と法廷戦術が最大のドラマである。

▼自信と正義感に満ちた被告の学者は、ホロコーストの生存者を証人に呼び、自ら法廷で原告と論争することを望んだ。だが、弁護団の方針は「否定論者と同じ土俵に立つな」だった。客入りが上々だったのは今のご時世と無縁であるまい。「信じたいことが真実」の風潮がはびこる時代。嘘との戦いに示唆を与えてくれる。

▼振り返れば、バブル期の女子高生は「ホントー」「ウッソー」を連発し、団塊世代の大人たちのひんしゅくを買ったものだ。でも、「ホント?」という命題の真偽への問いは、今や貴重に感じられる。最近の若者は「マジっすか?」である。真偽ではなく、発言者の本気度に対する疑問に変質した。世相を映す鏡だろうか。

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