2018年7月22日(日)

産業革新機構の安易な延長に異議あり

2017/12/13 23:03
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 経済産業省は所管する産業革新機構の運営期間を2034年3月末まで9年間延長する方針だ。日本では新たな企業や技術を立ちあげるための民間リスクマネーが不足しており、政府系ファンドの役割は依然大きいという認識が背景にある。

 だが、過去の革新機構の実績を見るにつけ、安易な延長には賛成しがたい。時限的な組織として出発したはずが、延長を繰り返して恒久的な機関になってしまわないかという心配もある。

 革新機構は次世代を担う新産業をつくるという旗印で09年に発足した。だが現実には経営不振企業の救済色の強い投融資案件も一部あった。本来なら退出すべき企業を延命させ、いわゆる「官製ゾンビ企業」を生み出すようでは、産業の新陳代謝に逆行する。

 官業が民の補完に徹するのは当然の原則だが、この点でも疑問符がつく。昨年初めにシャープの再建スポンサーの座をめぐって、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業と革新機構が争う事態になった。

 外資の支配を嫌う経産省の一部の意向も背景にあったとされるが、行政や政治の思惑に振り回されるようでは、ファンドとして投資規律が不十分と言うほかない。

 もともと日本は外資による直接投資が少なく、安全保障上の懸念がある場合を除き、外部の資本や人材を積極的に受け入れて経済の活力を高めないといけない。外資排除に官製ファンドが一役買うような事態があっては困る。

 革新機構以外の他の政府系ファンドにも共通する課題として、そもそも有望な投資先を発掘する目利き力や投資先を育てる経営支援力が十分か、という疑問もある。投資に失敗はつきものだが、全体の投資収益がマイナスになるようでは国民負担が生じかねない。

 現在、省庁ごとに政府系ファンドが乱立し、中にはバラマキ的な運営実態のものもあるとされる。官製ファンドのリストラこそ「待ったなし」の課題ではないか。

 日本でもベンチャー投資が盛り上がりつつあるが、リスクマネーの流れを一段と太くし、産業の構造転換を加速する必要がある。

 その主役はやはり「民」であるべきだ。余剰の資金を眠らせる金融機関や大企業が新たな技術や企業に積極的に投資し、次の成長につなげる。民間マネーが今の萎縮状態から脱却することが、日本経済が活性化する道である。

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