2017年12月11日(月)

中東和平の努力を妨げる身勝手な判断だ

社説
2017/12/8付
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 トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認め、商都テルアビブにある米国大使館をエルサレムに移す方針を決めた。

 中東和平の努力を妨げ、地域を不安定に陥れる身勝手な判断と言わざるをえない。

 エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地が集中する。旧市街の1平方キロメートルに満たない一角をめぐって歴史上、何度も衝突が繰り返されてきた。

 イスラエルは1967年の第3次中東戦争で旧市街を含む、東エルサレムを占領・併合した。エルサレムを永遠・不可分の首都と宣言する一方、パレスチナ人も将来の独立国家の首都と主張する。

 93年の「パレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)」は、イスラエルと将来のパレスチナ国家が共存し、エルサレムの帰属は当事者の交渉で解決することを確認した。

 国際社会もこれを和平実現の原則とし、各国はエルサレムでなくテルアビブに大使館を置く。

 オスロ合意は米クリントン政権が仲介して実現した。その後の交渉がうまくいっていないのは確かだが、イスラエルに一方的に肩入れするトランプ大統領の今回の判断は、公正な仲介者としての立場の放棄である。

 パレスチナやアラブ諸国は反発している。大使館移転を発表した大統領は中東和平交渉へ関与を続ける意欲を示したが、交渉は後退を余儀なくされるだろう。

 パレスチナ問題は不安定な中東の核心にある問題だ。今回の判断が民衆の怒りに火をつければ中東の混迷は増す。イスラム過激派が米国の姿勢を口実にテロを活発化させることも心配だ。

 懸念されるのは、トランプ大統領がどこを向いて判断を下したかだ。トランプ氏は大統領選挙戦でエルサレムへの大使館移転を公約に掲げてきた。

 自身の支持率が低迷するなかで、公約の実行で支持者をつなぎとめ、ロシアと政権の不適切なつながりが疑われる「ロシア疑惑」から国民の目をそらすことが狙いだとすれば、ご都合主義と言わざるをえない。

 日本は米国に追随してはならない。エルサレムの問題は、2国家共存の原則にたった和平交渉を通じて解決すべきだ。日本は、同じ立場に立つ欧州諸国などとともに、イスラエル、パレスチナ双方にこの原則に基づく直接交渉の再開を促していく必要がある。

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