2019年6月17日(月)

温暖化対策のシナリオ分析 ビジネス活用、裏読みカギ
Earth新潮流 (本郷尚氏)

2017/12/11 6:30
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パリ協定から2年。パリ協定実施のルールブック作りの交渉に関心が集まる。そして当面の最も重要な節目は「2030年目標の見直し」と「50年への長期戦略」が議論される20年会合だろう。

シンガポールやコロンビアで排出量取引活用を前提とした炭素税の導入が準備されるなど、各国で二酸化炭素(CO2)排出規制が整備されつつある。しかし、30年目標とパリ協定がめざす「地球の気温上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑える」目標への道筋では排出量に大きな隔たりがあり、20年会合を経て政策は強化される可能性が高い。

CO2規制は企業にとってコストと同時にビジネス機会ともなる。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言などにあるように投資家も企業の戦略に注目している。しかし、肝心の各国の政策は整備途上だし、方向性を示す国際的な取り決めも不透明だ。不確実性がある中で新しいビジネスモデルに転換するために必要なのが長期的なシナリオ分析だ。

第23回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP23)は情報収集の絶好の機会であり、米国エネルギー産業を含め大勢のビジネス関係者が集まった。そうした人たちはいくつかのシナリオを使っている。

政府間交渉で使われるシナリオ分析は国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告だ。気候変動は起きているのかなどの科学的分析、気候変動による影響、CO2など温暖化ガス削減のシナリオや技術の選択肢などを広範に取りまとめている。

パリ協定では5年ごとに削減の実施状況を確認するが、その際にIPCC報告書は活用されるとみられており、一層重要になりそうだ。豊富な分析内容は企業の戦略作りでも有用だが、難点は数千ページと膨大であり使いこなすのが大変だ。

エネルギーに特化したのが国際エネルギー機関(IEA)の世界エネルギー報告。IEAは石油危機をきっかけに先進国がエネルギー安全保障のために作った機関だ。CO2規制を強化すると原油価格が40年に40%も低下する可能性があるなど、気候変動とエネルギー問題は表裏一体と指摘。計画中の対策を実行した場合や、地球の気温上昇を2度未満に抑える目標の場合などのシナリオを示している。

シナリオプランニングで40年もの経験を持つ国際的な石油ガス開発企業、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルの分析や、脱化石燃料を早めるべきだと、再生可能エネルギーに注力した分析など特色ある民間分析も参考にされている。

政策や技術の不確実性を念頭に、このような前提を置くとどうなるか、このような世界にするには何が必要か、などを示すのがシナリオ分析だ。50年に「再生エネほぼ100%」もあれば、CO2地下貯留を使うことで化石燃料も活用する、など内容に差があるのは当然だ。長期戦略で使うには、前提条件や誰がどのような目的で作ったかを押さえることが大事だ。

また、ビジネスでは変化が起きる前の「変化の兆し」が重要だ。国際機関の分析は政府や大勢の専門家のレビューを受けるから角がとれた内容になりがちだ。変化の兆しを見逃さないためには定点観測と「裏を読み解く」ことが重要になってくるだろう。

[日経産業新聞2017年12月8日付]

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