2019年5月23日(木)

企業内起業家育成の論点
新風シリコンバレー (西城洋志氏)

2017/12/8 6:30
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経済産業省は、起業家や大企業などにおける新事業の担い手をシリコンバレーに派遣する人材育成プログラム「始動 NextInnovator」の第3期の公募を始めた。このプログラムでは、国内研修後、シリコンバレーの起業家や先端イノベーターと対話する。グローバル市場への進出や社会課題解決を目指す「目線の高い新事業創出の担い手」の育成を目指す。

ヤマハ発動機で表面実装技術やロボット事業のソフトウエア開発などに従事。2015年7月にヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーを設立、ベンチャー投資を含めた新事業開発に取り組む。

ヤマハ発動機で表面実装技術やロボット事業のソフトウエア開発などに従事。2015年7月にヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーを設立、ベンチャー投資を含めた新事業開発に取り組む。

私は以前から「企業内起業家」こそが日本におけるイノベーションエコシステム構築の要であると考えてきた。このプログラムでもメンターを務めている。今回は9人の方にメンタリングをした。そこでいくつか気づいたことがあった。

1つ目は「事業内容のインパクト・マグニチュードの小ささ」である。参加者の事業アイデアは、特定の困り事の解決を目的としたり、リスクが少なくなったりするような内容が多かった。多くの助言を受けた結果、自分がやりたかったこととはまったく別の事業案を持ってきた人もいた。

このプログラムの狙いは新しい価値の創造に挑戦する行動により、その人がイノベーターとして成長することである。だとすると、事業のリスクや必要資金の低減よりも、大きな社会課題を解決するにはどうすればいいか、まだ世の中にない新しい価値をどう創造するか、といった方向に力点を置いてほしかった。

メンタリング=アドバイス(指導)と思っていたのか、事業アイデアを言われた通りに修正する人も多かった。メンターは事業アイデアをより具体的かつ実現可能にするための刺激を与えているにすぎない。ベンチャーキャピタル(VC)やコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)も同じ役割を担っている。

何かを指摘したらすぐに事業内容や計画を変えるような相手には、信念や覚悟がないのかと思ってしまうのだ。実行する前に解はないし、あるとしてもそれは自分の中にしかない。

2つ目は「強い自前主義」だ。イノベーションの多くは現在の事業や価値定義の枠組みを越えて新しい価値を再定義することで生まれている。他社や異業種との協業は必須である。

「誰と組めばいいかが分からないので、計画に落とし込めない」というコメントもあった。まだ実現していない価値を創造しようとしているのだから、組むべき相手も世の中に存在していないことだって当然あり得る。自分でできそうなことに限定するとアイデアのインパクトも小さくなる。

3つ目はフォローアップの仕組みの必要性である。多様で強い刺激に触れて異質なものとの交流を果たしたイノベーターは、企業内起業家の卵である。終わったら元に戻ったり、今の事業が物足りなくなって会社を辞めたりするようなことがあってはならない。

送り出した企業は卵を温め、ふ化させる仕組みを整える必要がある。このプログラムが企業内でもできるようになれば、企業内起業家のエコシステムが構築できる。

[日経産業新聞2017年12月5日付]

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