2017年12月11日(月)

がんと仕事の両立に工夫を

社説
2017/12/4付
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 政府は第3期がん対策推進基本計画の中で治療、予防と並び、仕事との両立を国を挙げて取り組む課題として正式に位置づけた。現在、年間100万人以上ががんに罹患(りかん)する。その3分の1は生産年齢人口とされる。人手不足の中、十分に働ける社員が辞めれば企業にとって損失だ。

 本人も収入減と治療のための支出増で家計が苦しくなるうえ、生きがいを失う場合もある。国の負担も増える。治療と仕事の両立が進むことはさまざまなプラスを生む。カギを握るのは企業だ。

 がん治療は個人差が大きい。手術だけで終わる人もあれば放射線照射や抗がん剤が必要となる人もいる。勤務時間や休暇取得の柔軟な運用が求められる。介護や育児のため時間単位で休暇を取れる会社が増えている。病気治療にも同様の制度があれば患者は助かる。

 支援制度の整備と並行して進めたいのが、職場風土や意識の改革だ。厚生労働省などの調査では、がんという病気への先入観や職場のコミュニケーション不足も就労継続の壁になっているという。

 近年の生存率の向上を知らず仕事を辞めさせようとする。本人が公表を望まないのに秘密が守られない。薬の副作用による倦怠(けんたい)感が怠慢と判断される。あるいは患者本人が休暇や手当の制度を知らず、活用されない。こうした例も少なくないとされる。

 管理職や人事部門の社員に向けたがん治療に関する研修や、全社員を対象にした休暇制度や手当の周知といった活動に、企業はもう少し力を入れてはどうか。こうした取り組みは、社員が会社や上司と病気について気軽に相談できる雰囲気づくりにも役立つ。

 本人、上司や会社と並び、従業員の健康管理では産業医など医療の専門家が果たす役割も大きい。しかしがんの大半は業務が原因でかかる病気ではないため、産業医全般にがんの知識が不足しているとの指摘もある。がん治療に詳しい産業医や産業看護師の育成も急ぎたい。

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