2017年12月16日(土)

働き方変え「幸せな日常」
SmartTimes (柴田励司氏)

コラム(ビジネス)
2017/11/29付
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 東京メトロの駅構内に、思わず足を止めてしまう広告がある。ガス機器のパロマによる100枚の看板プロジェクトだ。赤ちゃんからお年寄りまでの「なんでもない、それでいて幸せな日常」の写真がそこにある。

1985年上智大文卒。マーサ-ジャパン社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブの最高執行責任者(COO)などを経て、2010年インディゴブルー社長、15年から会長。

1985年上智大文卒。マーサ-ジャパン社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブの最高執行責任者(COO)などを経て、2010年インディゴブルー社長、15年から会長。

 働き方改革の目的は残業規制ではない。長時間労働がなくなることは改革が実現した結果にすぎない。働き方改革は、働いている人の心を豊かにするものだ。「なんでもない、それでいて幸せな日常」のため。この改革は自分のためであり、自分の家族、恋人、友人のためなのだ。

 「なんでもない、それでいて幸せ」な瞬間は心を温かくする。それがあすへの原動力となり、他者への思いやりに転じる。こういう人たちがたくさんいる社会づくり。それこそが働き方改革の目的だと思う。

 これは誰かがやってくれるものではない。主体は会社ではなく自分。会社はそのための環境を整えたり、支援したりする存在だ。

 自分の仕事の仕方を見つめ、これまで1時間かかっていたことを30分でやる。やらなくてもいいことはやらない。仕事力を高めるために工夫し、努力する。朝1時間早く起きて、前日からのメールを処理する、短くわかりやすいメールを書く。問われる前に「報連相」をする。こうしたことを始めるだけでだいぶ変わる。

 上司は自分の忙しさにかまけて、部下を待たせたり、不要な仕事をさせたりして部下の時間を奪っていないか。何が決まって何が決まっていないのか不明な会議にしていないか。部下の個性を無視した接し方になっていないか、冷静に自分の行動を省みてみよう。

 会社は社員の工数を減らすために何ができるかを考える。例えばこんなことだ。白金台の八芳園にある槐樹という和食レストラン。ここではスタッフの呼び出しを工夫している。呼び出しボタンの代わりに、小さな箱が置かれている。その箱のそれぞれの面に「メニュー」「お水」「お会計」などの用途が書かれている。ゲストは用途に応じて、箱の向きを変える。

「パロマ100枚看板プロジェクト」のホームページより

「パロマ100枚看板プロジェクト」のホームページより

 そうすると、スタッフの腕にある受信機に、どの個室で何の要件でゲストが呼んでいるのかわかる。メニューとあれば、メニューをもって個室に行くことができる。この仕組みによって、これまで二度手間だったものが1回で終わる。こうした仕事のインフラ提案をするのが会社の仕事だ。20時に電気を消して回るのが仕事ではない。

 冒頭のパロマだが、十数年前に過去の自社製品による死傷事故が問題視された。私は本件の第三者委員会の副委員長だった。その当時の会社の様子を知る人間として、パロマがこの「100枚の看板プロジェクト」を主催していることを大変うれしく思う。

 この10年で会社の風土、働き方が相当変わったのだと思う。大きな拍手を贈りたい。

[日経産業新聞2017年11月29日付]

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