2017年12月17日(日)

山一破綻20年、金融改革の再起動を

社説
2017/11/25付
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 四大証券の一角だった山一証券の破綻から、24日で20年が経過した。当時の日本は山一のほか、三洋証券や北海道拓殖銀行など金融業界の相次ぐ経営破綻によって経済活動は凍りつき、市場が機能不全に陥っていた。

 危機を教訓に様々な改革が実行された。そのかいあって、20年前に比べれば日本の金融システムは確かに安定した。

山積の課題に向き合え

 しかしながら、改革の成果は期待したものには遠く、手つかずの課題も多く残る。今こそ世界の潮流も視野に、金融改革を加速させなければならない。

 過去20年をふり返ると、いくつかの変化がみてとれる。

 まず、再編が進んだ。1997年に都市銀行や長期信用銀行など10行以上がひしめいた大手銀行は、拓銀破綻の後、3メガグループを軸に統合が加速していった。証券会社は業界3位の日興が銀行傘下に入り、独立系は野村と大和の二大勢力となった。

 既存の銀行・証券のほか、インターネットを通じて個人向けに預金の受け入れや株式売買の仲介をするネット金融も、現在ではすっかり市民権を得た。

 また、山一が簿外取引で行きづまったことの反省を踏まえ、情報開示に関する改革が進んだ。単体が主流だった上場企業の決算は連結主義に移行した。資産を市場価格で評価する時価会計が導入され経営の透明度も増した。

 足元の株式市場は息を吹き返しつつあり、日経平均株価は約26年ぶりの高値水準を回復した。底が抜けたかのように株価急落が止まらないといった事態が遠のいたのは、金融システムの安定と市場改革の効果も表れているとみてよいのではないか。

 好業績と株高を背景として企業が投資や採用を拡大し始めるなど、デフレ脱却に向けた経済の好循環の兆しもみえる。

 とはいえ、改革の成果は満足すべき水準には届いていない。

 20年前の橋本龍太郎内閣は山一破綻と相前後して日本版ビッグバン(金融大改革)を本格化した。ビッグバンの目的は資金仲介に市場原理を導入し、リスクマネーの流れを促すことによって経済を活性化することだった。

 残念なことに、現状では資金が滞留している。個人の金融資産は20年間で1200兆円から1800兆円に増えたが、その半分程度を預貯金が占める構造に変わりない。企業が万が一に備え手元に余資をとどめておく傾向は、逆に強まった。企業の総資産に占める現預金の比率は、この20年で9%から12%に上昇している。

 個人と企業のお金の動きが鈍い結果、新興企業などに回る成長資金は不足し、産業の新陳代謝はおくれている。2017年の株式の新規公開件数は約90社と、ここ10年で最高水準が見込まれる。だが、90年代には100社超の企業が公開した年も多かったことを考えれば何とも物足りない。

 日本の外に目を転じると、97年のアジア通貨危機から翌年のロシア危機へと混乱の時代が続いた。世界はその後、米リーマン・ショックや欧州債務危機も経験した。現在は各国中央銀行による金融緩和政策などの効果で、経済は回復基調が鮮明になってきた。最高値圏で推移している米株式市場はその象徴といえる。

古い事業モデル捨てよ

 現在の日本は世界的な景気拡大と株高の恩恵を受けている。好環境に安住せず、金融・市場関係者は目前に積み上がる課題の解決にむけて動くべきだ。

 銀行は事業構造の転換が焦眉の急だ。保証や担保頼みの融資に頼ったビジネスモデルは限界に近い。企業買収の助言や資産運用といった、非金利収入をもたらす事業を拡大する必要がある。

 資本市場の改革では、不透明な持ち合いの解消を徹底するとともに、安倍晋三政権下で緒についた企業統治改革をさらに進めなければならない。官民をあげて金融教育に力を入れ、個人が自己責任に基づく投資に踏み出せる環境を整えることも大切だ。

 仮想通貨の広がりや同通貨を使ったICO(イニシャル・コイン・オファリング)と呼ばれる資金調達の登場など金融取引は変貌を遂げている。監督当局はグローバルな連携を深め、新しい現実に即したルールづくりを急ぐべきだ。

 少子化や長寿が進む日本社会では、経済の活性化や個人の資産形成がことのほか重要になっている。危機から20年の節目を、金融の構造改革を再起動させる出発点とすべきである。

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