キャリア観 起業に追い風
SmartTimes (高宮慎一氏)

2017/11/29 6:30
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日本のスタートアップの生態系は1990年代に始まり、99年の「ビットバレー運動」をきっかけに立ち上がった。起業家は第4世代にさしかかり、メルカリやスマートニュース、ラクスルなど、未上場ながら100億円規模で資金を調達し、世界でも戦えるスタートアップも登場している。

テクノロジー分野のスタートアップに数多く投資し、社外役員として経営を支援。支援先には、アイスタイルやナナピ、メルカリなどがある。東京大学経済学部、ハーバード大学MBA卒。

テクノロジー分野のスタートアップに数多く投資し、社外役員として経営を支援。支援先には、アイスタイルやナナピ、メルカリなどがある。東京大学経済学部、ハーバード大学MBA卒。

90年代以前は起業家というと「大企業になじめず脱サラしたのではないか」といった負のイメージが付きまとった。しかし、今の若者の間では「起業したり、ベンチャー(スタートアップ)に就職したりするのがクール(かっこいい)」というイメージになっている。

若者のキャリア観が変容し、大きな権限を持ち、事業を急成長させた経験を積みたいという、自己実現や自己成長がモチベーションとなっている。そして成功を収めた20代前半の起業家は、手の届く目標として道筋を示し、若い世代の起業を後押ししている。

例えば女性向けインターネットメディアを運営するCandle(キャンドル)の創業者、金靖征氏は、東京大学在学中に同社を起業した。それから2年後、彼は同社をファストファッションのネット通販のクルーズに売却した。

事業を軌道に乗せているスタートアップでは、数十・数百人規模で有力大学の学生を新卒採用している。彼らはそこでスタートアップの経営を学び、数年後に起業する。こうした流れが定着しつつある。

「シリアルアントレプレナー(連続起業家)」と呼ばれる人たちも台頭している。メルカリの創業者、山田進太郎氏はその好例だ。

山田氏は大学在学中に楽天でのインターンシップ(就業体験)を経てゲーム会社を設立、米国のゲーム会社のZynga(ジンガ)に譲渡した。2013年にメルカリを創業し、現在では日本初のユニコーン(未上場で時価総額千億円を超える企業)となった。

事業成功後に「エンゼル投資家(個人の資金でスタートアップに投資・支援する人)」として後進の起業家の育成に関わるパターンもある。ヤフーの執行役員の小沢隆生氏は、自身が設立したスタートアップ2社をそれぞれ楽天とヤフーに売った。エンゼル投資家としても、ナナピやキラメックス、スターフェスティバルなど有望なスタートアップを世に送りだしている。

大企業の人材もスタートアップに流れてきている。KDDIが傘下に収めたソラコムの玉川憲社長は、東京大学大学院と米国カーネギーメロン大学経営学修士を経て、日本IBMとアマゾンジャパンで勤務していた輝かしい経歴を持つ。

このように起業家の層が厚くなったことでスタートアップのエコシステムのサイクルが回り出している。日本の経済の活力を維持するには、優秀な起業家の輩出を促進し、エコシステムを進化させる必要がある。

[日経産業新聞2017年11月27日付]

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