2017年12月16日(土)

地震観測網を減災に生かせ

社説
2017/11/24付
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 世界有数の地震国である日本には陸地の約4400カ所、近海の約200カ所に地震計が設置されている。その多くを通信回線で結び、地震や津波の情報をいち早く伝えるシステムが稼働した。

 国立研究開発法人・防災科学技術研究所が運用する「陸海統合観測網(通称モウラス)」だ。

 地震の発生を震源近くでいち早くとらえ、注意情報を出せば、揺れや津波が伝わる前に備えることができ、被害を減らせる。だがデータの利用体制づくりは遅れている。国は、自治体や企業が使いやすいように公表方法を工夫し、減災に役立ててほしい。

 1995年の阪神大震災後、防災科研は各地で高精度の地震計を設けてきた。モウラスには陸の約2000台のほか、海でも東北地方太平洋沖の約150台、紀伊半島沖・四国沖の約50台の地震計を結んだ。世界最大の観測網だ。

 気象庁が発表している緊急地震速報は、いまは主に陸の地震計のデータから予測している。今後、海底地震計の活用が進めば、予測精度の向上が期待される。

 モウラスの稼働を踏まえ、JR東日本などは地震発生時に新幹線を緊急停止するシステムで海底地震計のデータを使う考えだ。これまでは自社の陸の地震計で初期の微動をとらえて停止信号を出していた。列車停止までの時間を最大20秒ほど短縮できるという。

 企業からはほかにも様々なアイデアが出ている。地震の直後に建物の倒壊率を予測し、救助の優先順位を決めたり、建物を安全に使えるかを判定し事業復旧に役立てたりするシステムなどだ。

 国はデータを誰でも使えるよう標準化したり、アプリ(応用ソフト)の規格を定めたりして、企業の取り組みを後押しすべきだ。

 政府は南海トラフ地震対策について、これまでの予知に頼る防災をやめ、不意打ちされても被害を減らす対策に軸足を移す。地震観測網も当初は予知や予測の精度向上が狙いだったが、今後は減災への活用を真剣に考えるべきだ。

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