2017年12月16日(土)

中東の混迷を拡散させるな

社説
2017/11/23付
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 有力王族や現職閣僚らを一斉に拘束したサウジアラビアの激震にあわせるように、サウジと周辺国の間で緊張が高まっている。

 首都リヤドにイエメンから弾道ミサイルが飛来し、サウジが迎撃ミサイルで撃ち落とした。レバノンのハリリ首相はサウジ滞在中に、自国での暗殺の危険を理由に辞任を表明した。

 サウジは事件の背後にイランがいると主張し、報復も辞さない構えを見せる。帰国したハリリ首相は辞任の凍結を表明した。しかし、不透明感を増すサウジ情勢に加え、サウジとイランの対立があちらこちらで火を噴くと、混乱は手に負えなくなる。中東の混迷を拡散させてはならない。

 サウジ政府は飛来したミサイルが「フーシ派が実効支配するイエメン領内から、ヒズボラが撃ったイラン製だ」と言う。

 フーシ派とはイエメンを、ヒズボラはレバノン南部をそれぞれ地盤とするイスラム教シーア派の武装勢力だ。同じシーア派のイランと強いつながりがあるとされる。

 サウジは自国を囲むように活動を活発化する親イラン勢力にいらだちを強めている。サウジの実力者ムハンマド皇太子は「イエメンからのミサイルはイランによる戦争行為だ」と非難した。

 サウジと親イラン勢力の衝突が新たな戦乱の発火点となりかねないか心配だ。サウジ政府はレバノンに滞在するサウジ人に退避を勧告するなど緊張が増している。

 懸念されるのはイスラエルもイランを安全保障上の脅威と捉えていることだ。危機感を共有するイスラエルとサウジが対イランで手を結ぶ。こんなシナリオも荒唐無稽とは言えなくなっている。

 サウジ国内の拘束者は増え続け、行く末が見えない。中東の混迷は世界の安定に深刻な影響を及ぼす。まずサウジが早急に国内の混乱を鎮め、サウジとイランが冷静さを保つことが必要だ。そのために両国の緊張緩和を促し、対立を周辺国に飛び火させないことが国際社会にとって急務である。

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