2019年4月25日(木)

ビジョン共有 人は動く
SmartTimes (大久保和孝氏)

2017/11/27 6:30
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コンプライアンス(法令順守)が叫ばれるようになってかなりの時間がたっている。それでも企業不祥事が相次ぐのはなぜか。

ERM(エンタープライズ・リスク・マネジメント)本部長も兼務。企業や政府などのコンプライアンス関係の委員・参与などを歴任。交渉学協会理事。大学などで人材育成にも取り組む。

ERM(エンタープライズ・リスク・マネジメント)本部長も兼務。企業や政府などのコンプライアンス関係の委員・参与などを歴任。交渉学協会理事。大学などで人材育成にも取り組む。

不祥事がおきると、表面的な現象だけを見て、ルール違反の有無や社会的影響ばかりを気にして、個人の責任で幕引きを図ることも少なくない。背景や事情を考慮し、根本原因を探らなければ、効果的な再発防止策は生まれない。

物理的な安全そのものに大きな問題がなくとも、ルール違反が見つかれば、不安感や不信感から糾弾される。今まで当たり前のように許されてきたことを不祥事と指摘されても、当の企業の社員はどれほどの罪の意識と反省の気持ちを持てるのだろうか。

「教育・研修」や「規則・罰則」といった施策の強化や「法令順守」の号令だけでは、現場は疲弊し、むしろ事態の悪化を招く。再発防止には、組織に根差す風土を変えるための意識改革が必要だ。根本原因を探求し、身近な施策を積み重ねて意識を変える。

意識を変えることは、ゼロから教育することとは違う。これまで許容されてきたことや既存の判断軸を、環境の変化に応じて変えるのは困難を伴う。そのためには「何のために取り組むのか」というビジョンの共有が不可欠だ。

ビジョンとは、目標とするゴールを「見える(ビジュアル)」化することを指す。どのような姿を目指し、どのような組織に変わるのか、具体的な未来の姿がイメージできるレベルにまで言語化したものである。ブランド力強化やコラボレーション推進といった掛け声は施策であり、ビジョンとは言えない。そこで働く一人ひとりがゴールを理解して課題解決に向けて自発的に行動する――。意識を変えるには、そうした環境を整える必要がある。

ゴールとしてのビジョンが明確になれば、具体的な解決策を導き出しやすくなる。見て見ぬふりをしてきたことにも正面から向き合い、多様な価値観をぶつけあって、根本原因を探ることもできるようになる。

一方、解決策という手段から検討を始めると、ときとして解決策の策定が目的化してしまう。再発防止という本来の目的とは異なる方向に向かい、結果的に真の目的を達成できなくなることが多い。

社会全体にも同じことが言える。憲法改正や働き方改革、教育改革、企業の社会的責任(CSR)活動。いずれも解決策や方法論を中心に議論がなされている。しかし、それらを実行した結果、どのような社会や組織になり、どういった人材が生まれるのか、といった具体的なビジョンが見えてこない。

大切なことは、具体的なビジョン(ゴール)を示し共有することだ。ビジョンの共有は、一人ひとりが自分ごととして現状に向き合い、課題解決に向けて自発的に行動することを促す。

[日経産業新聞2017年11月24日付]

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