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欧州発の資源循環政策 「3R」から経済戦略に

Earth新潮流 (半沢智氏)

欧州連合(EU)が資源循環政策「サーキュラーエコノミー(CE)」を打ち出して約2年が経った。当初は「実態が分からない」「新たな3R(発生抑制、再使用、再生利用)政策にすぎない」といった声も聞かれた。今、欧州企業が展開するビジネスの潮流を見ると、CE政策における真の狙いが見えてくる。

CE政策を推進する欧州には、「表の顔」と「裏の顔」がある。

「表の顔」は環境保全と資源枯渇への対応だ。資源や製品の価値をなるべく保持し、モノを長持ちさせて廃棄物の発生を抑える。こうして低炭素で資源効率的な社会を築こうというものだ。

「裏の顔」の1つは、欧州企業のビジネス拡大と世界進出だ。欧州は静脈産業をはじめとする資源循環ビジネスを拡大し、巨大な利益を創出することを狙う。廃棄物だけでなく、循環させるものを水やエネルギーなどに広げ、世界中の都市インフラを握りたい考えだ。

こうした戦略を体現している企業が、仏ヴェオリアだ。欧州には年間売上高が1兆円を超える「リサイクルメジャー」と呼ばれる廃棄物処理・リサイクル企業が存在する。ヴェオリアは最大手で、廃棄物処理だけでなく、上下水道やエネルギーなども手掛ける。

日本へは特に水処理事業での進出が目覚ましく、国内40カ所の浄水場、42カ所の下水処理場の運転管理などを請け負っている。いったん参入すれば20年以上の長期契約を結べ、安定した雇用や収入を確保できる。CE政策はこうしたリサイクルメジャーを旗頭に据え、欧州経済の持続的な成長につなげる狙いがある。

欧州委員会はCE政策によって、2030年までに新たに200万人の雇用と6000億ユーロ(約79兆円)の経済価値を生み出せると予想している。CE政策は「3R政策」でありながら、欧州企業の経済優位性を確立する「経済戦略」なのだ。

CE政策の「裏の顔」のもう1つが、参入障壁の構築だ。欧州域内で製品を販売する企業に対して、再生資源の情報開示を求めたり、再生資源の利用率を定めて一定の利用率に満たない製品の輸入を禁止したりするなど、非関税障壁を仕掛けてくる可能性がある。

こうした動きはすでにある。欧州委員会は環境配慮設計を義務付ける「エコデザイン指令」で製品中のリサイクル部品・材料に関する基準策定の検討に着手。また、化学物質規制の「RoHS指令」、製品含有化学物質の情報伝達を定めた「REACH規則」、化学品の表示や包装に関する「CLP規則」でリサイクル材に関する検討に取り組む必要があるという文書を17年1月に公開した。今後、これらの規則を使って情報公開を迫ったり、輸入規制につなげたりする可能性がある。

またCEでは従来の「モノ売り」から「サービス」を提供するビジネスモデルへの転換を促している。オランダ電機大手のフィリップスは「電球の販売」から「照明サービスの提供」へ転換を図り、世界で顧客を増やしている。寿命が長い発光ダイオード(LED)照明は、切り替え時にこそ多くの需要があるが、長期的には販売数が減る。

そこで、LED照明をメンテナンスして長く使ってもらいながら、駐車場の防犯や店舗の照明といった付加サービスにつなげる。「長寿命製品」で顧客をつかみ続け、様々な付加サービスの提供で収益を得る。

大量生産・大量消費型のビジネスモデルはいずれ立ち行かなくなる。グローバル競争に勝ち抜くには、来るべき資源循環社会を見据えたビジネスモデルの変革が必要だ。

これまで3R技術を磨いてきた日本企業にとってチャンスでもある。技術やノウハウを生かし、強みを発揮すべきだ。

[日経産業新聞2017年11月24日付]

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