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イノベーション生む風土

新風シリコンバレー (ロッシェル・カップ氏)

シリコンバレーの企業のイノベーションはいつも羨望の的である。しかし、シリコンバレーの企業が重点を置いているのは、何かの技術といったようなものだけではない。彼らが今、力を注いでいるのはチームの働き方と風土である。

チームにおける良い人間関係を促進するために、シリコンバレーの企業は様々な方策をとっている。会話や打ち合わせをしやすいオフィスデザインにお金をかけたり、意見交換やチームビルディングを目的とする「オフサイト」ミーティングをリゾート地で開いたりしている。メンバー同士のやり取りはイノベーションを生み出すために非常に重要だと思われている。

目に見えないものも重視されている。それは「サイコロジカルセーフティー(心理的安全性)」という概念だ。この言葉をシリコンバレーに紹介したといわれているのがグーグルだ。

彼らは会社を良くしようとする活動の一環として、社内でもっともパフォーマンスの高いチームとパフォーマンスの低いチームとの違いを分析した。構成メンバーの優秀さが決め手になるだろうという予想に反し、実際にはそのような結果にはならなかった。もっとも重要な要素はチームメンバーがどうやってお互いに接しているかであった。

ミーティングは発言しやすい環境なのか、間違いをオープンに話せる雰囲気になっているのか、臆せずに質問や発言をできるようになっているのか。グーグルはこうした基準をもとに心理的安全性という名前をつけ、分析結果を公にした。

このコンセプトの推進者は、ハーバード大学ビジネススクールのエイミー・エドモンソン氏だ。グーグルは彼女の研究を参照していた。彼女による定義はこうだ。「そのグループのなかではリスクをとっても安全であるということをチームメンバーが共通に信じている状態。また発言しても恥をかかせられたり、拒否されたり、懲罰されたりすることはないという自信でもある」

その環境では、質問したり、助けを求めたり、提案を出したり、新しいことにトライしたり、フィードバックを求めたりすることが積極的にできる。そうした行動は健全なチームワークに貢献する。だから心理的安全性のあるチームはパフォーマンスが高い。

心理的安全性のあるチームでは、失敗から学んで創造性とイノベーションを生み出せる。そうでないチームでは、皆が無難なことを言うだけになり、イノベーションが生まれない。

心理的安全性を生み出すには、以下のような行動が役立つ。(1)失敗を非難をしない(2)プロジェクトがうまくいかなくても、それにかかわっていた人たちの努力に感謝する(3)違った意見を表明した人に感謝する(4)発言の少ない人に発言を促す(5)ミーティングで参加者に自分が最近とったリスクを報告してもらう――。

イノベーションを起こしたいのであれば、まず自社の管理職がどのようにチームを管理しているのかを考えるべきなのだ。

[日経産業新聞2017年11月14日付]

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