2018年5月23日(水)

クールジャパン再生へ政府の役割見直せ

2017/11/11 20:35
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 政府のクールジャパン(CJ)政策が迷走している。官製ファンドの投資先の選び方や観光振興への助成などで、首をひねる資金の使い方が目につく。コンテンツ振興による日本のファンづくりという原点に返り、政府にしかできない役回りに徹すべきではないか。

 経済産業省は2007年、「感性価値創造イニシアティブ」という指針をまとめた。産業界は製品の耐久性や価格に代わり、デザインやイメージ、心地よさなどを訴え再生を図るべきだ、との内容だった。後のCJ政策の源流だ。

 大きな方向性や、イメージ戦略の起点にアニメなどの現代文化を生かす発想はうなずける。英国や韓国などの成功例もある。問題は資金の具体的な使い方だ。

 13年、経産省は官製ファンドの「海外需要開拓支援機構」、通称CJ機構を設立した。私たちは、有望な投資なら民間が手がけるはずであることや、日本製品だけを集めた施設は押しつけがましく無理があることなどを指摘し、監視や検証が必要だと警告した。

 現在、相当数の案件で計画が未達であると本紙調査でわかった。投資の決定過程の不透明さも指摘されている。国のお金を預かる立場の機構は、案件ごとの経緯や現状について、詳しい情報をきちんと公開すべきではないか。

 問題は機構だけではない。CJは省庁の垣根を越えて取り組むテーマと位置づけられた。この結果、農業、観光、地場産業振興や、成果の乏しい企業交流会などに支出先が広がっている。

 「これもクールジャパンといえなくもない」といった理屈でばらまき先を広げるのはやめたい。政府が取り組むべきなのは輸出や企業の支援ではなく、例えば長い目でみた人材の育成と交流だ。

 コンテンツの制作現場では、若者が低賃金、長時間労働で疲弊している。これではノウハウが蓄積しない。米、英、フランスなどは、創造的な仕事に従事する人々が適切な賃金を得られ、長く働ける仕組みをつくっている。

 外国人が日本で学んだり、働いたりしやすくすることも大事だ。各国の出版・娯楽業界に、現地と日本の両方の文化を肌で理解し、橋渡し役になってくれる人が増えれば、コンテンツの普及はもっと進むとの声もある。

 こうした課題は個別企業の力では限界がある。政府と民間との役割分担は、きちんと認識したい。

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