2017年11月18日(土)

健保の経営規律向上へ経済界は結束を

社説
2017/11/9付
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 主に大手企業が従業員とその家族の福利厚生のために設けた健康保険組合の財政が一段と窮迫している。各健保組合の理事長が経営感覚を磨くとともに、母体企業の経営層は医療費がかさむ要因に目を光らせ、制度のひずみを正すよう安倍政権に働きかけるべきだ。

 全国およそ1400の健保組合で組織する連合会によると、2016年度に経常収支が赤字になった健保は543組合、保険料率を上げたのは206組合だった。

 この結果、主に中小企業が組織する協会けんぽ(旧政府管掌健康保険)の平均保険料率である10%以上の料率を設定した組合は、304になった。主因は健保組合が高齢者医療制度に拠出する支援金などの増大である。

 医療技術の進展に伴って高額な薬や治療法が次々に開発され、健保組合の加入者が使う医療費そのものが膨らんだのもさることながら、一方的に迫られる拠出金の影響はことのほか大きい。16年度の拠出金総額3兆2800億円は、健保組合が医療費として支出した法定給付費の85%にもあたる。

 経営感覚に富む一部の健保組合は、病院・診療所が請求する診療報酬明細の監視強化や、加入者への健康指導を通じた病気予防に取り組んでいる。ビッグデータ解析や従業員のスマートフォン活用をいっそう工夫すれば、医療費の無駄を省く余地はさらに広がる。

 他方で、拠出金膨張の勢いは強い。現状は健保組合の努力も焼け石に水だ。75歳以上の後期高齢者の医療費は本来、消費税財源を主体にするのが理にかなっている。けがをしたり慢性疾患になったりするリスクが現役世代より高く、保険原理が働きにくいためだ。

 そのための消費税増税は、高齢者に資力に応じた負担を求めることにつながるので、世代間の不公平を和らげるのにも有効だ。しかし厚生労働、財務両省は企業の労使が保険料を負担する健保組合からの拠出金を引き上げて充当してきた。取りやすいところから取る策の典型であろう。

 このままだと一部の健保組合は団塊世代すべてが後期高齢者になる25年を乗り切れまい。解散組合の母体企業は協会けんぽへ移り、そのぶん国費負担が増大し、国の財政を苦しめる悪循環に陥る。

 拠出金の召し上げに歯止めをかけるべく、企業規模の大小にかかわらず結束して政府・与党に制度改革を迫る責務が経済界にある。

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