2017年11月22日(水)

サウジ皇太子の危険な賭け

社説
2017/11/8付
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 サウジアラビア政府が有力王族や現職閣僚ら数十人を拘束した。汚職への関与が理由とされるが、拘束を主導したムハンマド皇太子の王位継承に備えた権力基盤の強化と、抵抗勢力の排除がねらいと見たほうがよいだろう。

 サルマン国王の息子で、32歳のムハンマド皇太子は石油頼みの国家運営からの脱却を掲げ、大胆な経済・社会改革を進める。外交・安全保障から経済・石油にいたる、幅広い権限を握るからこそできる変革であるのは間違いない。

 ただし、批判や不満を力ずくでおさえこむ手法は国内に亀裂を生み、サウジの投資やビジネス環境に疑念を生じさせる危険な賭けと言わざるをえない。

 サウジ政府は公式には誰を拘束したかを明らかにしていない。だが、拘束者の中にはアブドラ前国王の息子で後継候補の一人だったムトイブ国家警備相や、著名な投資家のアルワリード・ビンタラール王子らが含まれているという。

 ムハンマド皇太子は改革の旗振り役として、非石油産業の育成や雇用の創出を急ぐ。イスラム教の理由から認めてこなかった女性の自動車運転や音楽コンサートも解禁する方向へ踏み出している。

 一方、隣国イエメンの内戦介入やイラン、カタールとの国交断絶も皇太子が主導したとされる。ムハンマド改革は若年層の支持を得る半面、王室内や宗教界には不満がくすぶる。泥沼化するイエメン内戦や周辺国との対立は地域の緊張を高めている。

 今回の拘束は王族であっても腐敗や不正は許さないとのメッセージを国民にとどけ、短期的には皇太子の権力基盤を強めるかもしれない。だが、改革の名のもとでの強引な政敵排除は新たな対立の火種となるのではないか。

 サウジは世界有数の原油輸出国だ。領内にはイスラム教の聖地メッカもある。その安定は国際政治・経済に不可欠だ。このことをサウジが認識し、日本を含め国際社会はサウジの改革が軟着陸できるよう支えていかねばならない。

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