2017年11月22日(水)

企業と個人 境目なくなる
SmartTimes (野口功一氏)

コラム(ビジネス)
2017/11/8付
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 NPO(非営利組織)への寄付金の集め方について議論する機会があった。以前は企業のマネジメント層の理解を得られれば、ほぼ自動的に支援をしてもらえたのだが、今はそれだけでは寄付してもらうところまでたどりつかないらしい。

イノベーションを生み出すための仕組み(プラットフォーム)づくりに従事。海外のスタートアップや大学、NPOとも連携してイノベーションの創出を戦略策定から支援している。

イノベーションを生み出すための仕組み(プラットフォーム)づくりに従事。海外のスタートアップや大学、NPOとも連携してイノベーションの創出を戦略策定から支援している。

 これは企業統治(コーポレートガバナンス)の考え方が浸透してきた表れといえる。寄付金の集め方も抜本的に変える必要があるという話になった。

 ポピュラーになってきたお金の集め方にクラウドファンディングがある。不特定多数の個人からお金を集める手法だ。寄付についても、組織の社会的意義に共感する個人から幅広く集められる可能性がある。

 ピア・トゥー・ピア(P2P)という言葉がある。もともとはIT(情報技術)用語で、サーバーを介さずに端末同士が情報をやりとりできる仕組みを指す。

 シェアリングエコノミーにおいて使われる場合は、不特定多数の個人と個人の間でのやり取りができるビジネスという意味で使われている。いわば「CtoC」型のビジネスであろう。

 ライドシェアや民泊では、シェアリングビジネスのプラットフォーム企業を介して、個人間取引が行われている。CtoC型ビジネスでは、同じ人物があるときは供給者になり、あるときは顧客になる可能性がある。私が車をライドシェアで提供することもあれば、民泊で他人の家に泊まることもあるといった感じだ。

 企業中心から個人主体に経済構造が大きく変化している。こうなった要因はいくつかある。

 1つは資本主義の成熟化だ。消費やモノの所有に対する疑問が生まれ、余っているモノや時間を共有しようとする考えが広がっている。そこには「もったいない」という意識もある。

 もう1つあげられるのがテクノロジーの発展だ。

 スマートフォンや全地球測位システム(GPS)などの発達により、個人が情報を発信したり、把握したりすることが容易になった。それがCtoC型ビジネスが誕生する素地になっている。SNS(交流サイト)の発展は、人間の「つながりたいという」感情を満たしてくれたし、人的なネットワークをデジタルでつくることを可能にした。

 このような状況下で企業の事業と個人の職業の境目がなくなり、専門性のハードルも下がりつつある。こうなると、個人の力がより強くなり、経済の主役が企業から個人へと徐々に移り変わっていく可能性もある。

 人間の仕事が人工知能(AI)に奪われかねないと言われているときに「個人が主役」というのは少し矛盾しているのかもしれない。しかし、そのような時代だからこそ、人間の力というものがより重要になると私は考えている。企業より非力と思われていた個人パワーが経済の主役になってくるのである。

[日経産業新聞2017年11月8日付]


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