2017年11月20日(月)

日米主導でアジア安定への道筋を

社説
2017/11/7付
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 安倍晋三首相とトランプ米大統領が会談し、日米が主導して「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進することで一致した。中長期的な地域安定への道筋を示したことは、アジアの平和と繁栄に資する。インドやオーストラリアなども巻き込み、より強固な枠組みに育ててほしい。

 「これほど緊密な首脳同士の関係はこれまでなかった」。首脳会談後の共同記者会見で、トランプ氏はこう力説した。歴代政権において日本が「日米蜜月」と強調したことは何度かあったが、米側がここまで評価したことはない。

北には対話より圧力で

 異例のゴルフ接待には賛否両論あるが、緊密なシンゾー=ドナルド関係が日米同盟をより強固にしたといってよいだろう。

 核・ミサイル開発をやめようとしない北朝鮮にどう対処するか。有事もあり得る状況を考慮すれば、トップ同士のパイプは太いにこしたことない。米政府にも融和を志向する向きがある。両首脳が対話よりも圧力に軸足を置くことを改めて確認したことは重要だ。

 安倍政権が今回の首脳会談で目指したのは、首脳同士の個人的な友情の深化だけではない。北朝鮮のみならず、中国の海洋進出など東アジアの安保環境には難題が山積する。トランプ氏を迎えるにあたり最重視したのは、どちらかの国で政権交代があっても揺るがない地域安保の枠組みづくりだ。

 実像と虚像の見極めが難しい外交・安保の世界では、軍事や経済の実力を精緻に積み上げることも大事だが、大ぶりの構想をぶち上げ、パワーゲームの主導権を握ることも意味がある。

 1980年代に米レーガン政権が打ち出した戦略防衛構想(SDI)は「まやかし」と冷笑されることもあったが、結果として冷戦終結に寄与した。

 中国は今年、「一帯一路」をテーマにした国際会議を開いた。習近平国家主席が4年前に提起した経済圏構想だが、徐々に安保の色彩を帯びつつある。

 この流れに待ったをかけるには、国力にやや陰りがみられる米国が「アジア関与」を語る程度では十分ではない。自由主義と市場経済という普遍的な価値を共有する国々で、西アジアから太平洋地域に及ぶ連携の輪を築き、互いに助け合うことで影響力を強める必要がある。

 ところが、自らの手腕に自信を持つトランプ氏は、多国間よりも2国間での交渉を好む。ドゥテルテ大統領とウマが合わないから、フィリピンには行きたがらない。ターンブル首相の電話をたたき切ったので、オーストラリアとは疎遠だ。そんな弊害が出ていた。

 日米が重視する南シナ海の自由航行を維持するうえで、大統領がドゥテルテ氏だろうとなかろうと、フィリピンの地政学的な重要性に変わりはないのだ。

 「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、トランプ氏が多国間の枠組みに理解を示した初めての事例である。このことの意味の大きさをよく認識したい。

 これがさらに環太平洋経済連携協定(TPP)への回帰など、経済分野にも波及するかどうかはわからない。安倍首相は共同記者会見で「日米で、この地域に公正で実効性ある経済秩序をつくり上げる努力を重ね、地域ひいては世界の経済成長を力強くリードする決意だ」と訴えた。今後も粘り強く説得に努めてほしい。

TPP復帰説き続けよ

 トランプ氏は首脳会談や経済人との会合で、日米の貿易不均衡に触れ、「公正ではない」と日本の対応に不満を表明した。日米2国間の自由貿易協定(FTA)の締結に向けた交渉開始を求める場面はなかったようだが、今後の出方はまだ読めない。

 安倍首相は、経済摩擦は麻生太郎副総理・財務相とペンス副大統領による日米経済対話にゆだねる姿勢を強調した。難しい問題だけに首脳間の争いにしない手法は正しいが、時間稼ぎと思われてはマイナスだ。

 トランプ政権は北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉や、米韓FTAの再交渉の準備などに追われ、日米協議を後回しにしている面がある。矛先がいつ日本に向かってもおかしくはない。楽観は禁物である。

 TPPは米国を除く11カ国による発効の道筋を固め、米国が復帰できる環境を整えておく。知的財産権やインターネット規制などでは世界貿易機関(WTO)を活用した解決策を促す。保護主義に傾きがちな米国に、国際協調の重要性を説き続けねばならない。

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