電力自由化の成果検証を
経済産業省の有識者会議は電力小売りの全面自由化後も、電力会社が消費者保護を名目に残している自由化前からの料金メニューをなくすかどうかの議論を始めた。
2016年4月に始まった全面自由化は事業者の競争を促して電気料金を抑制し、消費者の選択肢を広げることを目的に掲げる。1年半あまりが過ぎ、国民は広く自由化の恩恵を受けているか。撤廃にはこの検証が欠かせない。
全面自由化で消費者は自由に電力会社を選べるようになった。だが、参入する事業者が少ないと、競争が起きずに「規制なき独占」に陥り、料金がかえって上がることになりかねない。
国はこれを回避するために20年3月末までの経過措置として、電力会社が従来販売してきた料金メニューも残すことを認めた。
自由化前の料金メニューは、電力会社がかかった費用をすべて料金に転嫁する分、国が内容や水準を審査している。大手電力会社は全面自由化後、国の審査を受けずに自由に決める料金と、従来の規制料金の2本建てを続けている。
競争原理が働きにくい規制料金は撤廃するのが望ましい。だが、そのためには競争環境が定着していることが条件だ。
既存の電力会社から新電力に切り替えた消費者と、同じ電力会社の中で規制料金から自由料金に切り替えた消費者の合計は7月末時点で11.2%、全国で約700万件を超えた。先行した米欧との比較でもまずまずの実績だ。
だが、東京電力ホールディングスや関西電力では顧客の約9%が新電力に乗り換えたが、中国電力で変えたのは1.4%、北陸電力では2%にとどまる。ただし、中国電では1割超の顧客が同じ中国電の自由料金に切り替えた。電力大手では中部電力に次ぐ高さだ。
自由化の成果をどのように計るのか。まず、そのものさしを決める必要がある。そのうえで競争が進んでいない地域があるなら原因を究明し、新規参入を促す環境の整備を急がねばならない。